研究課題/領域番号 |
22K13802
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 公益財団法人日本モンキーセンター (2023) 中部大学 (2022) |
研究代表者 |
豊田 有 公益財団法人日本モンキーセンター, 学術部, リサーチフェロー (30838165)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 協力行動 / 社会構造 / 集団間移籍 / 母系社会 / 血縁度 / 繁殖戦略 / 社会生態 |
研究開始時の研究の概要 |
ベニガオザルでは、交尾の際に複数のオスが協力してメスを囲い込み交互に交尾をするというみられる「オス間の連合形成」が見られる。母系社会をもつベニガオザルにおいて、オスは性成熟に達すると産まれた群れ(出自群)から隣接群へ移籍するため、集団に属するオス間には血縁関係は維持されない。次世代の父性は分割不可能であるにもかかわらず、なぜ非血縁オス同士が繁殖機会という不可分な資源を巡って協力できるのか、本研究では、行動観察と遺伝解析の両側面から、その背景を明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
申請者は、博士課程より世界に先駆けて研究を進めてきたベニガオザルにおいて、この非血縁個体間の協力行動に該当する「オス間の連合形成」を発見した。そして、こうした協力行動が促される理由として、遺伝的血縁関係になくても社会生活を営む上で構築される「顔見知り」関係が、繁殖機会をめぐる強い競合条件下において連合形成として顕在化するのではないかと予測し、研究をおこなっている。本研究は、交尾以外の文脈でのオス間の個体間関係や、群れ移籍の履歴、出自群の相違など、非血縁個体間で協力行動を促進する要因を明らかにすることを目的としている。 当該年度では、野外調査による行動データの収集を実施した。個体識別情報を随時アップデートしながら、オスの集団間移籍に関するデータの蓄積を継続した。オスの集団間移籍に関するデータの収集に加え、過去に蓄積されているデータを集計し、分析をすすめた。その結果、オスの集団間移籍については一定の規則が認められ、不規則に分散しているというよりはオス間の個体間関係に依存して移籍先が決定されている可能性が示唆された。これは、オス間の協力行動を促進する社会的基盤として考えられる重要な結果である。現在、このデータをもとにした論文を執筆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた群れ全体の社会構造の可視化はすでに論文化されているが、さらに発展させた追加分析に着手できており、当初の予定以上の展開に至っている。また、移籍記録の蓄積に関する成果も既に論文化の段階に入っており、進捗は順調である。一方で、調査許可の通達の遅れにより生物由来試料の採取に大幅な遅れが生じたために遺伝解析による出自群の推定には遅延が生じている。上記の理由から、全体としては「概ね順調」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後も長期調査によってオスの移籍記録の蓄積に務めるとともに、本研究課題の期間中に現在執筆中のオスの集団間移籍に関する成果の論文出版を目指す。また、遺伝解析も進め、タイ国内のカウンターパートや集団遺伝の専門からと共同で解析を進めていく。特に、調査地に生息する各群れに遺伝的特徴(例えばマイクロサテライトDNAの多様性など)を見出すことができるか否かが、オスの出身群特定の鍵となるので、積極的に推進していく。
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