研究課題/領域番号 |
22K13877
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 仁愛大学 |
研究代表者 |
山岸 厚仁 仁愛大学, 人間学部, 講師 (10881790)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 社会的報酬性 / 条件性場所選好 / Tsukuba情動系ラット / 多動・行動障害 / 場所選好 / 動物モデル / 発達障害 / 脳内メカニズム / オキシトシン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,自然発症的な多動・行動障害の動物モデルとなるTsukuba情動系ラットを対象に,他者との触れ合いが報酬として機能するはたらき,すなわち社会的報酬性の行動学的・神経科学的特徴の解明を目指す.行動課題では,他個体の存在を報酬とした場所選好課題を被験体に課し,その前後に行うテストにて他個体と共に滞在した場所に対する選好を調べる.Tsukuba情動系ラットを対象にこの行動課題を実施して,社会的報酬性に基づいた学習行動およびその神経科学的特徴の評価をおこなうと共に,社会的行動の調整を担う神経伝達物質の一つとして知られるオキシトシンのはたらきに着目した検討を実施する.
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研究実績の概要 |
本研究では,多動・行動障害の社会的報酬性について解明するため,自然発症的に特異な情動反応性を有するTsukuba情動系ラット(高情動(high-emotional, H)系/低情動(low-emotional, L)系)を用いた検討を行っている.2023年度は他個体との触れ合いという社会的報酬を経験した場合と,非社会的報酬 (食物報酬) を経験した場合で,それらを報酬とした条件性場所選好に違いが生じるかどうかを検討した. 行動課題では,黒色区画-中央区画-白色区画の3区画から成る実験箱を用い,オスのH系とL系をそれぞれ食物報酬群と他個体報酬群の2群に分け,無報酬で黒色区画内に滞在する経験と,群名に対応した報酬(他個体報酬群:同居経験のあるWistarラットとの滞在,食物報酬群:5粒の45 mg食物ペレットの呈示)を白色区画内で与える場所条件づけをおこなった.その前後のテストにて,黒色区画と白色区画を自由に往来できる状況にて,両区画での滞在時間を調べた.その結果,H系とL系のいずれにおいても他個体との触れ合いを経験した場所への選好が生じることと,その選好に系統差がないことが認められた.また,食物報酬群では条件づけ後に選好が生じないことが示された.これらの結果から,少なくとも本実験においては他個体の触れ合いという社会的報酬はTsukuba情動系ラットにとって非社会的報酬よりも高い強化力を持つことと,その系統差が顕著ではないことが明らかになった. さらに,これらの行動課題を終えた被験体の脳を固定・薄切し,免疫組織化学的検討を実施したところ,前部帯状皮質,内側線条体などの報酬系に関連する脳領域において,神経活性の指標となるFosタンパクが発現していることを確認した.今後は,Tsukuba情動系ラットの同課題における中枢神経活性の系統差について,さらなる検討を進めていく必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,Tsukuba情動系ラットの社会的条件性場所選好における中枢神経活性について,免疫組織化学的検討を通して検討した.しかし,検討の際に用いた試薬 (anti-c-fos抗体) が原因と考えられるFosタンパク可視化の困難や,本検討での対象群となる食物報酬群にて条件性場所選好が明確に形成されないという問題が生じた.そのため,中枢神経活性におけるTsukuba情動系ラットの系統差について明確な結果を出すことができなかったことから,当初の計画よりやや遅延していると判断せざるを得ない.なお,試薬の変更や食物報酬の変更により,これらの問題は現時点で概ね解決している.そのため,次年度ではさらに研究に注力することで本年度の遅れを取り戻すことが可能であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により,社会的報酬に基づいた学習行動におけるTsukuba情動系ラットの系統差が顕著に生じないことが確認された.その原因を探るため,刺激個体のパラメーター (週齢や同居経験の有無,系統) を操作した検討をおこなうと共に,行動課題に供した被験体の脳組織を用いたFosタンパクを指標とする中枢神経活性の系統差について検討を進める予定である.
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