研究課題/領域番号 |
22K13891
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 美裕 京都大学, 理学研究科, 助教 (50916517)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 保型表現 / 周期 / distinguished表現 |
研究開始時の研究の概要 |
L関数は数論のさまざまな研究対象に付随して定まる, よい性質をもった関数であり, その解析的性質や特定の点での値(特殊値)からは, 対応する数論の研究対象に関する情報が取り出せると考えられている. 本研究では, 保型表現に付随して定まる保型L関数について, 次の2つの課題に取り組む. 1つは, 周期と呼ばれる量と保型L関数の特殊値を結びつける課題であり, もう1つは, 保型L関数の無限個の族に対して, その特殊値の分布を調べる手法を開発する課題である.
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研究実績の概要 |
本研究は, 保型形式の周期とそれに関連するp進群のdistinguished表現に関する研究である. 本研究の目的は, 保型形式の線型周期と保型L関数の特殊値の明示的な関係式を与えることであり, そのために必要な局所周期の構成(p進群上の相対截頭作用素の計算と, 行列係数の正規化された積分の計算)を行う予定だった. 実際, p進群上の相対截頭作用素を定義し, 正規化された積分とその解析接続を示すところまでは予定通り進んだ. 前年度までの研究では, p進群やLie群の表現が0でない線型周期をもつための条件に関するプラサド-タクルー=ビガシュ予想(PTB予想)を, ほとんどの場合に(剰余標数が2の場合を除いて)解決することができた. 本研究課題に取り組むうちに, この予想を適切に再定式化することで, 未解決のまま残っている場合を含めて証明できる可能性があることがわかった. PTB予想は本研究課題とも密接に関係している問題であるので, 当初の計画を変更してPTB予想の残りの場合の証明に取り組むことにした. 方針としてはワルドプルジェによって局所GGP予想の解決のために導入され, ブザール-プレシスやチェン-ワンらによって様々な周期に対して確立された, 局所相対跡公式と重複度公式の理論を使う. 本年度の研究では, Lie環上での局所相対跡公式の幾何サイドの展開について, 2種類の相対截頭作用素により2通りに正規化された積分が一致していることを証明した. これは, 局所相対跡公式の幾何サイドの証明に不可欠な計算である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では, p進群やLie群の表現に対してその行列係数の積分を正規化することで局所周期を構成し, これを用いて保型形式の線型周期に対する明示的なEuler積表示を与えることを目標にしていた. 本年度の研究では, p進群上の相対截頭作用素を使って行列係数の正規化された積分を定義し, その解析接続を示すことができた. 当初の計画では, 不分岐表現の場合に正規化された積分を計算し, テータ対応を使って低次元群の場合に具体的に目標とするEuler積表示を求める予定だったが, 方針の変更を行なった. 前年度までの研究で部分的に解決できたプラサド-タクルー=ビガシュ予想(PTB予想)の残りの場合を解決できる可能性を見出したため, 計画を変更して先にこの問題に取り組むことにした. そのため, 研究の進度は予定よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き, 線型周期に対応する局所相対跡公式の幾何サイドの展開を計算する. 跡公式を局所化して対称空間のLie環上の問題に帰着する際に, 対称空間の降下(descent)として現われる対称空間すべてに対して幾何サイドへの寄与を計算する必要がある. このうち, 非自明な寄与をもつ項に対しての必要な計算はすでにほとんどできている. 一方で, 寄与しない項(分裂線型周期に対応する項の一部)に現われる積分が0であることを示す必要があり, その証明はまだ完了していないので, まずこの問題に取り組む. また, 群の対称空間に付随する局所相対跡公式を局所化してLie環の問題に帰着させるステップにも取り組む必要がある. 基本的な方針は, 導入した良い近傍(good neighborhood)と半単純元の共役類の交差を計算するというワルドプルジェの元来の議論と同じである. ただし, 線型周期に付随する対称空間の場合, 良い近傍のとり方にさらなる工夫が必要になる可能性があるので, その点も考慮しつつ進める.
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