研究課題/領域番号 |
22K13915
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
只野 誉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (20772396)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | m-Bakry-Emery Ricci 曲率 / epsilon-range / Myers の定理 / Bochner-Weitzenbock 公式 / Laplacian 比較定理 / Riccati 不等式 / Ricci 曲率 / Bakry-Emery Ricci 曲率 / 積分 Ricci 曲率 / 直交 Ricci 曲率 / 横断 Ricci 曲率 |
研究開始時の研究の概要 |
Riemann 幾何学において自然かつ重要な問題のひとつは曲率が Riemann 多様体に及ぼす幾何学的性質を理解することである。Riemann 幾何学の重要な定理の多くは Ricci 曲率の言葉を用いて記述される。近年、様々な幾何学的構造を備えた Riemann 多様体に対してその構造をより巧く反映する Ricci 曲率の変形版が定義され、対応する幾何学的性質が活発に研究されている。 本研究は、幾何学的構造を備えた Riemann 多様体に定義される変形された Ricci 曲率をさらに変形・統合・一般化し、それらを備えた Riemann 多様体の幾何学的性質を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
今年度は昨年度、一昨年度に引き続き、m-Bakry-Emery Ricci 曲率を備えた Riemann 多様体の幾何解析学的性質を調べた。特に Ricci 曲率の言葉を用いて記述される定理の中で最も基本的なものの一つである Myers の定理に焦点を当て、この定理の様々な一般化に対して m-Bakry-Emery Ricci 曲率への対応物を整備することを試みた。その結果、次の成果を得ることができた: (1)B.Y. Wu(Internat. J. Math. 32 (2021), 2150048)による Ricci 曲率の2次の減衰を仮定して得られる Myers 型の定理を m が正、負、無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を用いて一般化した。 (2)m が正、負、無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率の4次の減衰を仮定して Myers の定理を一般化した。この結果は m-Bakry-Emery Ricci 曲率が Ricci 曲率であるときに Myers の定理を改良するものである。この結果は令和4年度に学術雑誌 International Journal of Mathematics に掲載許可された(掲載許可日:2023年3月8日)。 (3)Y. Lu, E. Minguzzi, S. Ohta(Anal. Geom. Metr. Spaces 10 (2022), 1-30)が導入した epsilon-range 付き m-Bakry-Emery Ricci 曲率の概念を用いて、m が正、負、無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を用いて一般化された Myers 型の定理を epsilon-range 付き m-Bakry-Emery Ricci 曲率の設定へ一般化した。 (4)X. Cheng, E. Ribeiro Jr., D. Zhou(Proc. Amer. Math. Soc. Ser. B 10 (2023), 33-45)の結果を用いて4次元コンパクト Ricci ソリトンが Hitchin-Thorpe 不等式を満たすための新たな十分条件を与えた。この結果は報告者が以前に得た同様の十分条件(J. Math. Phys. 59 (2018), 043507)を改良するものである。 これらについては学術論文を作成し、それぞれを学術雑誌へ投稿した。同結果については今後の日本数学会年会をはじめとする会議、研究集会等で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ricci 曲率が Riemann 多様体に与える幾何学的性質を m-Bakry-Emery Ricci 曲率に対して拡張することは幾何解析学及び微分幾何学において重要な研究課題であり、多くの研究成果が報告されている。今回、Ricci 曲率の言葉を用いて証明された様々な定理を m-Bakry-Emery Ricci 曲率やその一般化である epsilon-range 付き m-Bakry-Emery Ricci 曲率の設定へ拡張できたことは新たな知見をもたらすものである。報告者はこれらの研究成果をもとに新たな問題に取り組んでおり、整備すべき定理を得ることができていることから、研究がおおむね順調に進展していると評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
多様体の曲率とその上に定まる幾何構造の相互関係を調べることは、微分幾何学および幾何解析学において中心的な研究課題であり、多くの研究者によって様々な進展が日々報告されている。来年度から新型コロナウイルス感染症による旅行制限が徐々に緩和され、感染症流行前の状況に戻り、国内外の研究集会等が通常通り再開される見込みであることから、これらの研究集会等に積極的に参加し、研究代表者の結果に関して講演を行ったり、参加者と討論を行うこ とで情報収拾を精力的に行い、研究を推進したいと考えている。
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