研究開始時の研究の概要 |
強い相関をもつランダム場の極値理論を研究する. 強い相関をもつランダム場としては, 多項式相関をもつランダム場および対数相関をもつランダム場を考え, その最大値分布と極値過程(極値点の配置) の極限定理を研究する. 多項式相関をもつランダム場の特徴は, 独立なランダム場と多くの共通する性質をもつことである. 本研究では, その類似性の研究および独立なランダム場とは異なる性質の研究を行う. 対数相関をもつランダム場の特徴は, 独立なランダム場とは異なる性質をもつことであり, 最大値分布や極値過程はある種の普遍性をもつと予想されている. 本研究では, その予想の解明に向けた研究を行う.
|
研究実績の概要 |
bを2以上の整数とする. 深さnのb分木を考え, その上で定数スピードの連続時間単純ランダムウォークを走らせる. ただし, ランダムウォークは葉の集合上の一様分布から出発し, 根に到達したらそこで停止するものとする.本研究では, このランダムウォークの局所時間(各点における滞在時間)に関する極値統計について調べた.より具体的に説明するために,まずは関連する先行研究を紹介する. Biskup-Louidor (2024)はこの局所時間(の平方根)の葉の集合上における最大値を考え, その最大値を適切に中心化したものが, nを無限大にとばしたときに, randomly-shifted Gumbel分布と呼ばれる非自明な確率変数に法則収束することを示した. この極限分布は古典的な極値分布の一つであるGumbel分布に形が似ているが,ランダムシフトがあること および 右裾の漸近挙動が異なることから, Gumbel分布とは別物である.このような違いは, 局所時間を確率変数系とみたとき, それが対数相関をもっていることに由来する. 実際, 同様な収束は対数相関をもつ様々な確率変数系の最大値で成り立つことが知られており, その意味で対数相関をもつ確率変数系におけるある種の普遍的な性質だろうと予想されている. 本研究はこのBiskup-Louidor (2024)の研究の続きである.研究対象はいわゆる極値過程と呼ばれるランダム点測度である. この極値過程は, 第一成分が極大値をとる葉の位置, 第二成分がその極大値を適切に中心化したものであるような点配置を表現するものである. 本研究ではこの極値過程が, nを無限大にとばしたとき, decorated Cox過程と呼ばれるランダム点測度に法則収束することを示した. 本研究はMarek Biskup氏との共同研究である.
|
今後の研究の推進方策 |
b分木上の単純ランダムウォークの局所時間に対応する極値過程の極限は, あるCox過程のアトムに独立同分布な"decoration"と呼ばれる点過程を付けたものであり, そのdecorationは分枝ランダムウォークで表現できることが今回の研究でわかった. 今後は, 一般の設定でそのようにdecorationが分枝ランダムウォークで表現できるための十分条件を見つける.
|