研究課題/領域番号 |
22K13933
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 広島工業大学 (2023) 広島商船高等専門学校 (2022) |
研究代表者 |
石橋 和葵 広島工業大学, 工学部, 講師 (30825386)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 振動問題 / マシュー方程式 / ヒル微分方程式 / 非線形微分方程式 / 差分方程式 / リッカチ変換法 / タイムスケール / Conformable derivative / ハーパー方程式 / 微分方程式 / 相平面解析 |
研究開始時の研究の概要 |
制御工学と関係が深いマシュー方程式の振動問題の歴史は古く、膨大な数の研究がある。しかし、現実モデルを反映させた非周期関数を係数にもつマシュー方程式に対して、既存の振動判定法は適用できない。また、マシュー方程式を離散化したハーパー方程式の振動問題にも同様の難点がある。 本研究では、一般化したマシュー方程式とその離散方程式の解構造を振動・非振動の観点から精密に解析する。実際に、リッカチ変換と相平面解析を駆使し、両者の解構造の類似性や相違性に着目して、新しい振動・非振動判定法を確立する。さらに、連続モデルと離散モデルを混合したハイブリッド型マシュー方程式の解構造も精密解析し、振動理論の一般化を目指す。
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研究実績の概要 |
令和4年度に引き続き、本年度も常微分方程式および差分方程式の振動問題に取り組み、以下の研究テーマについての成果を得た。また、以下の概要は、既に国際学術誌に投稿中の内容である。 (1)周期係数をもつ減衰付き非線形微分方程式の解の振動性:非線形項を含む減衰付きヒル型微分方程式の全ての proper な解が振動するための十分条件を導出した。対象とする方程式の非線形項は、エムデンーファラー型を含んでいる。ヒル型微分方程式は周期関数を係数にもつ方程式として有名であり、その方程式の代表例はマシュー方程式である。従来の振動判定法では、一周期分の定積分に着目した条件があり、その条件を直接非線形マシュー型方程式には適用できない。しかしながら、本研究で得た振動定理を利用すれば、特殊な場合の非線形マシュー型方程式にも適用可能となった。導出した振動定理の証明は合成関数を利用したリッカチ不等式が鍵となる。 (2)周期係数をもつ減衰付き半分線形微分方程式の振動問題:1次元p-ラプラシアンをもつ微分方程式は半分線形微分方程式とも呼ばれている。本研究では、周期係数をもつ減衰付き半分線形微分方程式のすべての非自明解が振動する(または、振動しない)ことを保証する十分条件を与えた。この研究内容は、上述した(1)の関連研究であり、特殊な場合の半分線形マシュー型方程式にも適用可能となる。 (3)常微分方程式と差分方程式の解の類似性:近年、分数階微分をモチーフとした微分の定式化が活発的に導入されており、その微分は conformable derivative と呼ばれている。本研究では、conformable derivative をもつ線形微分方程式と差分方程式のすべての非自明解が振動しないことを保証する十分条件を導出した。また、タイムスケールという概念を活用すれば、その二つの方程式の定理は、類似した非振動判定法となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した通り、【研究実績の概要】の欄に記した内容は既に国際学術誌に投稿中である。また、杉江実郎氏(島根大学名誉教授)との不連続力学系に関する1編の共著論文もJournal of Mathematical Analysis and Applicationsに掲載済みであるため、研究はおおむね順調に進展していると考える。令和4年度に学術雑誌に掲載された論文内容は、日本数学会2023年度秋季総合分科会で発表済みである。また、京都大学数理解析研究所の共同研究事業として開催された研究集会(常微分方程式の定性的理論の発展とその応用)では招待講演をさせて頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、マシュー型方程式を含む非線形微分方程式の振動問題に力を入れてきた。ただし、【研究実績の概要】の欄に記した非線形マシュー型方程式は特殊な場合であるから、今後は一般的な非線形マシュー方程式にも適用可能な振動・非振動判定法を確立する。また、制御工学に応用をもつ非周期関数を係数にもつマシュー方程式や外力項をもつマシュー方程式にも注目していく。その一方で、周期関数を係数にもつ差分方程式の振動問題にも取り組む。特に、量子力学に応用をもつハーパー方程式は周期系差分方程式の具体例となる。マシュー方程式の差分化がハーパー方程式に対応しているため、数値実験を利用しながら、両者の比較研究により、解構造全体の類似性や相違性を解明していきたい。さらに、【研究実績の概要】の(3)に記した分数階微分と関連性がある conformable derivative をもつ方程式の振動問題にも興味がある。ただし、conformable derivative と分数階微分の関連性についてはさらなる議論が必要であるが、今後注目を浴びる方程式の一つであると期待している。その方程式に対する伝統的な振動・非振動判定法(例えば、LeightonーWintner型振動定理、Wintner型非振動定理など)は確立されておらず、まだ発展途中である。そのため、conformable derivative をもつ方程式の振動問題も発展させていきたい。
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