研究課題/領域番号 |
22K13938
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小池 開 東京工業大学, 理学院, 助教 (30914551)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 圧縮性Navier-Stokes方程式 / 長時間挙動 / Green関数の各点評価 / 分子気体力学 / 流体構造連成問題 / Boltzmann方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,分子気体力学にもとづいて流体構造連成問題を扱うための数学理論を構築することである.ここで分子気体力学とは,統計力学的な気体力学の理論であり,通常の流体力学が適用できない非平衡な流れも扱えるという特徴を持つ.一方,流体構造連成問題とは,流れと固体(構造物)の相互作用に起因する種々の問題を指す.
非平衡流に対する流体構造連成問題はMEMS(極小サイズのデバイス)との関連から,数値計算による研究が盛んに行われている.一方,数学的な理論は未発達で,数値計算法の理論的根拠を与えるといったことが難しい状況にある.本研究ではこうした背景を踏まえ,厳密な数学理論の構築を目指して研究を行う.
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研究実績の概要 |
本課題の目的は,流れと運動物体の相互作用を分子気体力学の観点から理解すること,またそのための数学理論を構築することです.大きな目標はBoltzmann方程式で記述される流れを扱うことですが,そのための第一歩として,本年度は圧縮性Navier-Stokes方程式の場合の研究を進めました.
実績1. 空間1次元の圧縮性Navier-Stokes方程式について,解の漸近展開と剰余項に対する精密な各点評価を得ました.結果自体は前年度に得られていましたが,本年度,論文が掲載されました(https://link.springer.com/article/10.1007/s00205-023-01914-4).この結果により,空間1次元の圧縮性粘性流中を運動する物体の長時間挙動を精密に調べられるようになりました. 実績2. 上記の結果を応用して,空間1次元の圧縮性粘性流中を運動する調和振動子の長時間挙動を明らかにしました.具体的には,調和振動子の変位 X(t) は時間 t が増大するとき,少なくとも t^{-3/2+ε} より速いオーダーで減衰することが分かりました(ε は任意の正定数).また,この結果をいくつかの研究集会で報告しました(論文は現在執筆中です). 実績3. 空間1次元の圧縮性Navier-Stokes方程式について,ある種のcontrollabilityを証明しました(未公表の成果のため,詳細は省略します).これは本科研費の助成を用いて行ったフランス出張を通して得られたものです.この結果は運動物体を伴わない流れに対するものですが,運動物体と相互作用する流れについても拡張できると考えられます.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの研究は,流れが順圧的な場合に限られている.当初の計画では温度変化の方程式を含めたNavier-Stokes-Fourier方程式に対する結果も得たいと考えていたが,それは未達成である.一方,この問題に関連する共同研究を現在行なっており,少し見通しが立ってきている.また,同様に当初の計画にあったBroadwellモデルに対する問題も,重要な点に関して進展が得られている.これらに加え,当初の計画にはなかったが,「研究実績の概要」で述べたcontrollabilityに対する結果も得られており,こうしたことを総合して記載の区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
1. これまでに得られたNavier-Stokes方程式に対する結果をBroadwellモデルに拡張する.計画当初に想定していた大きな問題点は解決しており,翌年度は詳細をつめていきたい. 2. Navier-Stokes方程式に対する結果を温度変化の方程式を含めたNavier-Stokes-Fourier方程式に拡張する.以前に途中まで計算して頓挫していたが,最近,そこで用いていた手法の専門家と共同研究を開始した.議論を通してこの問題の解決を目指す. 3. 従来の計画にはなかったが,本年度得られたcontrollabilityに関する結果を流体構造連成問題に拡張することを目指す.また,この結果を運動論モデルに対して拡張できるかも考察したい.
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