研究課題/領域番号 |
22K13939
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福田 一貴 信州大学, 学術研究院工学系, 講師 (60882214)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 散逸・分散型方程式 / 一般化ZKB方程式 / 移流拡散方程式 / 解の漸近挙動 / 高次漸近形 / 非局所分散項 / 非整数階分散項 / 散逸-分散型方程式 / 非線形波の方程式 / Burgers型方程式 / 解の長時間漸近挙動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では, 散逸と分散の効果を伴う非線形波の偏微分方程式の数学解析に取り組む. 具体的には, 非整数階分散項を含む一般化Burgers型方程式の初期値問題を中心として, その解の長時間漸近挙動について考える. これは, 一般の非線形波の数理モデルとみなすことができ, 非整数階分散項によって複数の非線形波の方程式をつないでいるのが特徴である. 本研究では, 非線形項や散逸と分散の効果の影響, また初期値や外力の形状など, それらの相互作用により, 解の長時間挙動がどのように変化していくのかに着目して漸近解析を行う. これらの研究を通して, 非線形波動理論における新たな解析手法の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は, 散逸・分散を伴う非線形波のPDEのうち, 以下の二つに対する初期値問題に関する研究で成果が得られた. (1) 一般化Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式 この方程式は, 分散項と散逸項の形状に空間異方性があるのが特徴であり, それが解の構造にも本質的な影響を与え, 解の時間減衰評価には, 放物型・分散型方程式の既存のどれとも異なる特有の減衰率が現れる. 報告者の以前の研究では, 非線形項の冪が四次以上の場合について, その解の時間減衰評価と減衰率の最良性が調べられていたが, 今回の研究ではそれを大幅に一般化することに成功した. 具体的には, まず解の時間減衰評価を非線形項の冪が三次以上の場合に対しても得られることを示した. さらに, 放物型方程式と分散型方程式の解の漸近形の導出方法を組み合わせることで, 初期値に付加条件を仮定した下での, 解の詳細な漸近形を導出することにも成功した. (平山浩之氏との共同研究.) (2) 拡散係数が関数となる場合の移流拡散方程式 散逸効果が優勢になる散逸・分散型方程式の解析のヒントになると期待して, 変数係数の拡散項を持つ移流拡散方程式の研究を行った. この問題については, 拡散係数が関数ではあるが漸近的には定数という状況では, 解が熱核に漸近することが示されており, さらに解の第二次漸近形も導出されていた. 特に, 非線形項の指数に応じて第二次漸近形が三つに分岐することや, 指数が臨界冪以上の場合には, 拡散係数の影響が第二次漸近形に現れることなども示されていた(Duro-Carpio, 2001). 本研究では, 積分方程式をより詳細に解析することで, 非線形項や拡散係数の影響を考慮したより高次の漸近形を導出し, 既存の漸近公式を一般化することに成功した. (佐藤槙哉氏との共同研究.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 当初予定していた研究とは若干予定が異なるものの, 散逸・分散を伴う非線形波のPDEの初期値問題に関する研究に順調に取り組み, 解の漸近挙動に関する新しい進展があったと言える. 特に, これまで関連する結果すら全く得られてこなかった, 一般化Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式の解の漸近形を導出できたことは大きく, 散逸・分散型方程式の解の長時間挙動の研究に大きな一石を投じることができたと言える. 移流拡散方程式の研究についても, 放物型方程式の一般論から得られるものとは異なるタイプの高次漸近展開公式を導出しており, この分野における新展開であると言える. また, 上述した二件の研究については既に論文が完成しており, 特に一般化Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式に関する論文は, 国際雑誌Nonlinear Analysis: Real World Applicationsにおいて出版された. なお, 移流拡散方程式に関する論文についても, 現在国際雑誌にて査読中である. さらに現在, 今回の漸近解析の手法が, 似た形を持つ別のタイプの散逸・分散型方程式に対しても応用できないかも検討している最中であり, ある程度の見通しが立っている状況である. このため, 次年度以降の研究の進展にも期待が持てることから, 本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り, 今後の研究では, まずはじめに今回の漸近解析の手法を, 似た形を持つ別のタイプの散逸・分散型方程式に対して応用することから考える. 具体的には, 一般化Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式と同様, 分散項と散逸項に空間異方性がある, 一般化KP-Burgers方程式に対して, 現在既に解析を行っている最中である. この問題に関しては, 報告者の以前の研究で解の時間減衰評価とその最良性について調べているが, 今回の手法を応用すれば, より詳細な漸近形が得られるのではないかと期待しており, 実際にある程度の見通しが立っている. さらに次年度以降は, これらの方程式に関して, 非線形項の影響を本質的に反映した漸近公式の導出も行いたいと考えている. 今回の一般化Zakharov-Kuznetsov-Burgers方程式の研究においては, 非線形項の冪が三次以上の場合に, 解の漸近形が導出できているが, 冪がより小さくなり非線形項の影響が本質的に効いてくるような場合については, 未だ漸近形が導出できていない. 特に, 線形性と非線形性が拮抗するような, 非線形項が臨界冪となる状況に興味がある. 移流拡散方程式の研究を通して, 散逸性や非線形性の扱い方は掴んできたものの, 次の課題では分散性と非線形性の相互作用をどう捉えるかなどが鍵となるであろう. このような状況に近い研究として, 分散型方程式の長距離散乱の論文などが参考になると期待できるので, まずはそれらの文献を精査することから始めたいと考えている.
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