研究課題/領域番号 |
22K13954
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 京都大学 (2023) 北海道大学 (2022) |
研究代表者 |
劉 逸侃 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70773084)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非整数階拡散方程式 / 漸近挙動 / 非線形性 / 解の爆発 / 逆問題 / 非整数階拡散方程式系 / 非整数階反応拡散方程式 / 適切性 / 非整数階微分 / 反応拡散方程式 / 解のダイナミクス / 比較原理 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで単独かつ線形の枠組みで調べてきた非整数階拡散方程式の一般化として、本研究は「線形の非整数階拡散系」、「単独の非整数階反応拡散方程式」並びに両者の融合である「非整数階反応拡散系」という3つの対象を考察する。各方程式に共通する比較原理を定性的解析の主軸として、数値実験を介して解の挙動を観察し、関連する逆問題にも取り組む。特に非局所性による遅い拡散と反応のバランスが解の振る舞いにもたらす効果を、解の爆発・進行波解・Turing不安定性などの側面から見極め、そのメカニズムを解明する。さらに通常の反応拡散方程式(系)が示す解のダイナミクスとの関係と差異を調べ、新しいパターン形成の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
本年度は非整数階拡散方程式に関する先行研究および前年度の成果を踏まえ、「線形方程式系」および「非線形方程式」の解のダイナミクスに対して、それぞれ新しい漸近挙動の発見と爆発問題の一般化に成功した。 1. 異なる1回未満の時間微分をもつ線形拡散方程式の結合系の解について、前年度はシャープな長時間漸近挙動を示したが、一部の成分の初期値が恒等的にゼロの場合は解明されなかった。これに対して数値スキームを作成し、数値実験で検証することにより、解の漸近挙動は初期値が恒等的にゼロでない成分のうち、最小の時間微分階数に依存することを発見した。さらに整数階と非整数階拡散方程式の結合系を考察し、計算条件を変えて同様に検証したところ、既知の減衰パターンと全く異なる新しい振る舞いを観測した。これらの計算結果をヒントに、特殊な場合に対して理論上で同じ結果を証明した。 一方、関連する逆問題として、全ての微分階数を一成分に対する空間一点の観測データで決定する問題も考えた。前年度はこの問題の一意性を示したが、本年度はGauss-Newton法に基づく再構成法を開発し、数値計算を行い高精度の結果が得られることを確認した。 2. 半線形の非整数階反応拡散方程式の解について、前年度は特殊な境界条件下で非線形項が藤田型の場合に限って爆発問題を調べたが、本年度は問題設定を大幅に一般化しながら、より精密な結果を得た。具体的には、一般の斉次境界条件を課し、非線形項を下に凸かつ優線形のみと仮定して解の爆発問題を考察した。Kaplanの方法を用いて、解の重み付きL1ノルムに着目し、方程式に含まれる楕円型作用素の第一固有値が非正ならば必ず爆発し、正ならば条件付き爆発することを示した。さらに、爆発時刻を下から評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
線形の非整数階拡散系の解の長時間漸近挙動について、数値シミュレーションを活用することにより、当初の計画に含まれなかった予想外の振る舞いを発見した。特に通常の拡散方程式との結合系に関して、既知の減衰パターンと全く異なる新しい振る舞いが観測され、それをヒントに理論証明の糸口を掴んだ。これによってカップリングが非局所性にもたらす非自明な効果は明らかになり、さらに非線形効果を入れると発展の余地は十分にあると思われる。 一方、計画していた解の非線形ダイナミクス(爆発問題など)および数値解析の研究も、着実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今まで得られた成果を整理し示唆を受け、線形の非整数階拡散系および非線形の非整数階拡散方程式に対してそれぞれつぎの研究を行う。 線形の非整数階拡散系について、数値計算によって解の新しい振る舞いを発見したが、理論証明は特殊の場合に留まっている。まず様々な計算結果を整理し、解の漸近挙動に関する予想を立てる。つぎに簡単の場合である2成分の結合系から着手し、Laplace変換等の手法を駆使して証明を試みる。順調であれば、さらに一般の多成分の結合系に取り組む。一方、漸近挙動の検証に付随した数値スキームの構築は完成したが、その安定性などの数値解析も遂行する。 非線形の非整数階拡散方程式(系)について、通常の1回時間微分をもつ反応拡散方程式(系)に関する先行研究を精読し、解析道具と手法を取り入れる。特に整数階と非整数階の非線形ダイナミクスにおける差異と類似性を見極め、その原因を探る。同時に、代表的な反応拡散方程式の非整数階版に対して数値計算を行い、得られた解の振る舞いを観察する。
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