研究課題/領域番号 |
22K13963
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 群馬工業高等専門学校 (2023) 早稲田大学 (2022) |
研究代表者 |
大森 祥輔 群馬工業高等専門学校, 一般教科(自然), 助教 (70777979)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | max-plus力学系 / 超離散化 / 分岐現象 / リミットサイクル / 離散力学系 / 非線形ダイナミクス / 正値差分化 / 非線形動力学 / max-plus代数 / 区分線形離散力学系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、max-plus代数に基づく非線形動力学を構築し、max-plusモデルを連続モデルと離散モデルの架け橋とすることで「連続モデルと離散モデルの間にはどのような数理科学的関係があるか」というウルフラムの第9番目の問題にアプローチする。そして得られた結果を、物理学をはじめ応用数学、工学、生物学、経営学といったこれまでmax-plus代数及び非線形動力学を用いて記述されてきた現実系へ応用し、新たな見方や数学的記述方法を提示することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究は、max-plus力学系というmax-plus代数構造に基づく新たな非線形動力学の構築を行うことで、非線形現象に対する新しい見地や数学的記述方法を提示することを目標としている。本年度は、max-plus力学系におけるリミットサイクルを重点的に研究する共に、研究実施計画に則してカオス力学系や反応拡散系への応用を行った。具体的な研究成果は以下の通り。 (a)これまで知られていたリミットサイクルを有するmax-plusモデルをより一般的なモデルに統合し、その解析を行う事でmax-plus力学モデルにおけるリミットサイクルが一般的に有限個の状態から構成されること、また準周期構造を有することが明らかとなった。 (b)区分線形力学系の分野で知られているBorder Collision Bifurcation(BCB)なる分岐の二次元標準型と(a)で得られたmax-plusモデルとが互いに関係しあうことを示した。これにより、本来全く異なる分野である超離散系と区分線形力学系とがmax-plus力学系を介して結びつくことが分かった。更にロバストカオスと呼ばれる区分線形力学系で見られるカオスを生じるmax-plusモデルを考案し、その解析を行った。 (c)max-plus力学系におけるパターン形成なる研究にも着手した。具体的には、(a)で得られたモデルから導出される簡単なmax-plus力学系に対して空間効果を導入し、そこから得られる非線形波の解析を行った。 上記の研究報告として2023年度内で論文が3本掲載済、1本が掲載決定の状況である。更に現在2本の論文投稿を行っている状態である。学会発表も積極的に行い、9月の物理学会や6月のRIMS研究集会(力学系)に加え、8月、10月の可積分研究集会や12月の応用数学合同研究集会、翌3月の応用数理学会にて研究成果の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究進捗状況がおおむね順調に進展している理由として、これまで得られた超離散力学モデル(max-plus力学モデル)を一般化したmax-plusモデルを発見することができたことが挙げられる。このモデルは汎用性が高く、実際ロバストカオスと呼ばれる特定のカオス力学系と結びつくことや、空間効果をいれることで、max-plus力学系に基づく反応拡散系の構築が可能となった。この結果、研究実施計画で予定していたmax-plus力学系本来の一般的性質(リミットサイクルや固定点の安定性など)の解析に加え、カオス力学系や反応拡散系の応用研究が大きく進展することとなった。具体的な進展内容は以下の通り。 (1) 一般化したmax-plusモデルによって、リミットサイクルを構成する状態数と、モデルに含まれるmax項の係数(パラメータ)に対する定量的な関係式の導出に成功し、ダイアグラムを用いて可視化した。 (2) 一般化したmax-plusモデルにおけるパラメータを適切に選ぶことで、この系がロバストなカオスを生成することを発見した。さらに、このモデルが超離散化という差分方程式の独立・従属変数すべてを離散化する手続きによって得られることを示し、その超離散化の際に周期倍分岐を起こしながらカオスが現れることを数値計算を用いて明らかにした。 (3)一般化したmax-plusモデルから導出される、Negative feed-back(NF)を有するmax-plus力学系に空間項を加え、そこから得られる時空パターンを導出した。特に、NFのmax-plus力学系が4周期からなるリミットサイクルを有しているため、導出されるパターンもこの状態数に依存した非線形波を形成することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに、max-plus力学系のカオス力学系への応用、及び空間効果を入れた際のmax-plus力学系に関する研究を発展させる。具体的な方策は以下の通り。 (1) カオスを生むmax-plusモデルの解析: まずは本年度の研究で得られたロバストカオスを生じるmax-plus力学モデル(Lozi max-plusモデル)に着目し、カオス力学系理論で用いられている手法をLozi max-plusモデルへ適用する。既に、分岐ダイアグラム及びリヤプノフ指数を用いた解析は終了しているため、今後は、スペクトル解析やフラクタル次元の解析に使われる手法などを適用する。また、max-plus力学系は従来の連続力学系とは異なる区分線形性から誘発される力学挙動が多々見られるため、従来のカオス力学系の手法で、本研究にも応用可能な手法とそうでないものとを分類する。これにより、手法そのものに対する考察も行う。 (2)空間効果を有したmax-plusモデルの時空パターンの解析: 本年度の研究結果から、一般化max-plusモデルから導出される、Negative feed-back(NF)を有するmax-plus力学系に空間項を付加することで、非線形波が現れることが確認されている。この際、空間効果をmax代数でいれるか、従来の反応拡散系の様に和の形でいれるか選択肢はいくつかあり、空間効果の入れ方自体をまず詳細に検討する。加えて、非線形波は元の力学系のリミットサイクルの性質に依存して現れることが示唆されているため、リミットサイクルの性質が異なる他のmax-plusモデルの場合に、非線形波はどのような性質を有するか調べる。研究の進み具合によっては確率効果を入れるなどして理論の拡充も行う。
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