研究課題/領域番号 |
22K13964
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
西田 優樹 東京理科大学, 工学部情報工学科, 助教 (70906601)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | max-plus代数 / 離散事象システム / 固有ベクトル / 上三角化 / 固有多項式 / 相似変形 / 対角化 / Max-plus代数 |
研究開始時の研究の概要 |
Max-plus代数は加法として2数の最大値をとる演算,乗法として2数の和をとる演算をもつ代数系であり,スケジューリングをはじめとした離散事象システムの解析に応用されている.Max-plus代数上ではほとんどの行列が固有値を1つしか持たない一方で,固有多項式の根は重複度を込めて行列の次数と同じ数だけ存在する.そこで本研究では,固有多項式の根に付随するベクトルを用いてmax-plus行列の対角化理論を構成し,固有多項式の根が持つ豊富な情報を離散事象システムの解析に応用する.
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研究実績の概要 |
離散事象システムの漸近的な振る舞いを調べるうえで,max-plus代数上の行列固有値に関する理論を整備することは重要である.前年度中には,max-plus行列が優対角という性質を持つ場合に,固有値や固有ベクトルを用いて行列を標準形へと相似変形できることを示したが,本年度はこの結果をnearly diagonally dominantという行列のクラスの場合へと拡張した.この場合に得られる標準形はJordan標準形に似たブロック上三角行列であり,対角行列と同様にべき乗の計算が容易に行える.この結果は,単なる優対角行列の場合と比較して,固有多項式の根のうち最小のものの重複度が2以上の場合へと拡張できたことを意味する.またセルオートマトンによる交通流モデルがnearly diagonally dominantな行列を用いて記述することができることを明らかにし,理論と応用の両面からmax-plus行列の対角化の重要性を裏付けた.この結果は国際会議ICIAM2023で発表され,また論文誌Discrete Event Dynamic Systemsへの掲載が決定した. 次に,行列の対角化や上三角化は通常の線形代数の場合には行列の相似変形であることから,max-plus行列の相似変形と固有値問題の関連について研究を進めた.具体的には,同値関係であるという性質を保つような,相似変形を引き起こす行列の対のなす集合をunitary-pair半群として定義し,これが固有値問題とうまく対応することを示した.この結果は,RIMS共同研究(公開型)「可積分系数理における最近の展開」で発表され,RIMS講究録別冊への掲載が決定している. そのほか,CSR展開を用いたmax-plus行列の対角化について準備的な結果を得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Max-plus行列の対角化という点については,対角化の代わりとなる上三角化やJordan標準形について応用上重要な行列クラスに対して十分に成果を得ることができた.また,max-plus行列の相似変形についても研究を進め,対角化可能な行列のクラスやその限界がどのあたりにあるかについても知見を得ることができた.さらに,行列のCSR展開と固有値問題の関連についても研究に着手できており,その中で固有多項式の根のグラフ理論的な意味についても明らかになってきている.
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今後の研究の推進方策 |
Max-plus行列の冪に関する公式として有名なCSR展開について,固有多項式の根の立場からの研究を進める.また,CSR展開の計算においてはグラフ上の最短経路問題が重要な役割を果たすことから,固有多項式の根や代数的固有ベクトルがグラフにおいて持つ意味を明らかにする.さらに,代数的固有ベクトルが応用できる問題の1つとして,離散事象システムにおける優固有ベクトルの計算法や性質の解明について検討を始める.
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