研究課題/領域番号 |
22K13965
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
湯浅 智意 東京都立大学, 経営学研究科, 准教授 (80875914)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | Election strategy / Winning probability / Informational strategy / Signal processing / Bayesian statistics / KL divergence / Newton--Raphson method / Gauge theory / Clark--Ocone formula / Tracking error / Polynomial diffusion / Euler--Maruyama scheme / 金融派生商品(デリバティブ) / 価格付け(プライシング) / Unbiased simulation / Parametrix method / 非マルコフ過程(非半群性) |
研究開始時の研究の概要 |
Ballly-Kohatsu (2015)やHenry-Tan-Touzi (2017)によって,離散誤差が生じないUnbiased simulationが考案された.この数値計算手法は計算時間が速く,実務では重宝される性質を持つ.従来の方法だと,複雑な金融モデルによっては離散誤差が大きくなるめ,離散誤差が生じないUnbiased simulationが有用となる.Unbiased simulationは基本的な確率過程のみでしか開発がされておらず,複雑な確率過程に関しては現在のところ未開発である.本研究では,複雑な金融モデルに対応するUnbiased simulationの開発を行う.
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研究実績の概要 |
2023年度は1本の論文を出版し,1本の論文を再投稿した.(a)Dorje C. Brody氏(University of Surrey)との共同研究「Three-candidate election strategy」をRoyal Society Open Scienceから出版した.候補者が3名以上いる選挙を考える.ある候補者が選挙で将来勝利する確率を「(i)各候補者の現在の支持率,(ii)各候補者の相対的な政治的立場,(iii)選挙までの残り時間,(iv)現在から選挙当日までに有権者に情報が開示される割合」の関数としての数理モデルを構成した.モデルによると,候補者が2名の場合,現在の支持率が50%を上回っているならば情報を開示しない,下回っているならば情報を開示することが最適戦略となるが,候補者が3名以上の場合,このような自明な最適戦略は存在しない.特に,政治的立場が中央に位置する候補者は将来勝利することが困難になることが示された.(b)Ryo Nakamura氏(Tenchijin Inc.)とTakafumi Amaba氏(Fukuoka University)とJun Fujiki氏(Fukuoka University)との共同研究「Simple Variational Inference Based on Minimizing Kullback--Leibler Divergence」を再投稿した.統計モデルを固定し,パラメータに対する事前分布を変化させ,ベイズ統計モデルから真の分布を推定する手法を開発した.また,確率シンプレックス上のリーマン幾何学に基づいて,事前分布をシミュレーションするためのNewton--Raphson methodを開発した.この手法は,真の分布に関する知識がなくても,真の分布からサンプルを得ることさえできれば適用が可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本科研費では主に確率的な数値計算手法であるUnbiased simulation methodの開発を目的としている.現在進行しているProjectは次の通りである.(1)Bally-Kohatsu (2015)のBackward型のUnbiased simulation methodに対するSecond order unbiased simulation methodの開発.(2)Henry-Tan-Touzi (2017)のUnbiased simulation methodに対するSecond order unbiased simulation methodの開発.(3)Unbiased simulation methodの新しい分散減少法の提案.(4)反射壁確率微分方程式に対するSecond order unbiased simulation methodの開発.(5)ラフボラティリティモデルに対するKLNV法(K-scheme)の開発.(6)中央主権型交換所(CEX)と分散型交換所(DEX)が共存する市場モデルの構築.(7)共同研究「Three-candidate election strategy」の続き.現在までの進捗状況は次の通りである.(1),(2)は共同研究者の遅延・離脱により進捗が遅れている.(3),(4)は前回から進捗していない.(5),(6),(7)はいずれも週一でセミナーを実施しており,順調に進んでいる.当初予定していた非整数ブラウン運動に関する研究は方針を(5)に切り替えている.また,当初予定していた「離散時間市場モデルにおけるアメリカン(バミューダン)オプションに対する深層学習を用いたヘッジ手法の開発」は責任著者の放棄により頓挫,「極性タグ付き金融文書を用いて単語に極性スコアを自動で付与する手法の開発」は責任著者の意向により停滞している.
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今後の研究の推進方策 |
(5)→(7)→(6)→(1)→(2)→(3)→(4)の優先順位で取り組む.(5)において,ラフボラティリティモデルは非マルコフであるため,直接KLNV法を適用することはできない.そこで,ラフボラティリティモデルに対するMa-Yang-Cui (2021,arxiv)の無限次元セミマルチンゲール近似をmodifyしたマルコフな有限次元セミマルチンゲール近似を導入することで,KLNV法の適用を試みる.(7)において,共同研究「Three-candidate election strategy」では,選挙で将来勝利する確率の関数の引数である情報(iv)を一色単にして考えていた.本研究では,各候補者が発進する情報に分け,さらに,メディアといった情報やフェイクニュースといった偽情報を加えることで,より現実に則した数理モデルを構成する.(6)において,CEXとDEXが共存する市場モデルを構成し,各々のプレーヤー(Traders, Arbitrageur, Liquidity Providers, Platformer)の最適な行動を議論する.(1),(2)において,各々のUnbiased simulation methodに対して,Andersson-Kohatsu-Yuasa (2020)のSecond order methodの適用を試みる.(3)において,Unbiased simulation methodにおける無限和と時間に関する多重積分をRenewal過程を用いて確率表現を与えるのではなく,各々に分けて確率表現を与えることで,新しい分散減少法を考える.(4)において,反射壁確率微分方程式に対するUnbiased simulation methodに対して,Andersson-Kohatsu-Yuasa (2020)のSecond order methodの適用を試みる.
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