研究課題/領域番号 |
22K13967
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
翁長 朝功 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (90823922)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ネットワーク科学 / 金融市場 / ゲーム理論 / 伝播現象 / 統計物理学 / 経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
社会ネットワークにおける情報の伝播、流行の商品の購買行動は、ある人のイベントが次の人のイベントの発生を引き起こす共通点があり、伝播現象と総称される。この現象は、閾値モデルが研究されてきた。二状態モデルは詳しく調べられているが、近年ゲーム理論で注目されている四状態モデルのダイナミクスは系統的に理解されていない。本研究では、四状態の閾値モデルを分析し、観測される相の数を明らかにする。そして、相転移の条件を求める。さらに、閾値モデル(経済学における調整ゲーム)において得られた理論を、感染症モデルまたはより広いゲーム理論モデルまで一般化する。
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研究実績の概要 |
伝播現象とは、感染症、意見や情報、金融市場における取引など、イベントが次のイベントの発生を引き起こす現象の総称である。これらの現象は、ネットワークを通して社会または金融市場に伝播していく。伝播現象に関する研究は世界的に活発に行われているが、未解決問題は山積している。また、金融ネットワークなど経済学分野への貢献も期待されている。本研究課題の目的は、伝播現象におけるバースト性について、理論的に解明し、複数の伝播現象への応用を行う事である。 2022年度は、1つ目に、2財のネットワーク・ゲームの分析を行った。Zoom などのコミュニケーション・ツールや、キャッシュレス決済などの通貨は、他者と同じものを使うと便利である。このような財は社会ネットワークを通して拡散する。1財の拡散は Kobayashi and Onaga, Economic Theory 2022 の方法で分析が可能である。補完または競合する2財がどのように拡散するかについて、分析手法を構築した。競合する財の場合には、初期に生じた小さな差が次第に増幅される。そのため、魅力度が同等の財でも、対称的な均衡に辿り着かず、片方の財のみが拡散することを明らかにした。 2つ目に、金融の投げ売り連鎖に応用した。株価などの金融資産の状態は連続値である価格で特徴づけられる。これまでの、伝播現象の分析法は主に二状態に限られていた。連続状態である金融資産をモデル化するために、多状態の閾値モデルを提案した。このモデルの解法として、近似マスター方程式を用いて分析する理論を構築した。理論と数値シミュレーションを比較し、理論の妥当性を検証した。arXivにアップロードし、国際誌への投稿を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2財のネットワーク・ゲームにおいて、拡散の不安定性を明らかにした論文が、1本の査読付き論文として出版されたため、予定以上の成果を上げることができたと言える。金融資産の投げ売り連鎖に応用した研究の方も、すでに国際誌への投稿を行っており、査読中である。上記の理由により、今年度は「概ね順調に進展している」と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、今年度得られた解析法及び解析結果を基盤としながら、拡散時間の分析など発展となる解析を進める予定である。また、すでに論文でまとめた成果について、国際会議で発表を行い、認知度を高めることを行なっていく。
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