研究課題/領域番号 |
22K13972
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 晃太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (40895819)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 量子多体系 / テンソルネットワーク / トポロジカル秩序相 / 量子スピン液体 / 量子情報理論 / エンタングルメント / 条件付き相互情報量 / SPT相 |
研究開始時の研究の概要 |
トポロジカル秩序相は、従来の局所的な秩序変数による方法では特徴づけられない、新奇な量子相である。こうした相の特徴づけを行う方法として、従来の方法に代わり、多体相関を特徴づける情報理論的な関数を用いたものが知られている。しかし近年、非トポロジカルな起源を持つ多体相関を含むスピン系が発見された。現在広く知られた方法では、この非トポロジカルな多体相関と、トポロジカル秩序相特有の相関を区別することは出来ない。本研究では、2次元スピン系における新たな秩序変数の理論の確立を目指し、基底状態に現れ得る異なる種類の多体相関の分類、及び定量化法を与える。
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研究実績の概要 |
本年度は,非トポロジカルな起源を持つ多体相関の条件とその性質について更なる解析を行った.特に,非カイラルな2次元トポロジカル秩序相の1次元端状態の解析をテンソルネットワーク(行列積演算子,MPO)によるモデル化を通して行った.こうした端状態は,バルク系のトポロジカル秩序の存在により,非局所的な対称性を持つことが知られている.また,非トポロジカルな起源を持つ多体相関も,非局所的な性質を持った端状態に由来することが分かっている. 本研究では,端状態の非局所的な性質を数学的に分類するため,MPOの特徴づけに着目した.MPOで記述される1次元混合状態は,Ciracらの先行研究により,相関長が0となる繰り込み固定点の構造定理が知られている.一方で,導入された繰り込み固定点に至るための繰り込み操作の存在は分かっていない.そこで,本年度はまず一般の混合量子状態に対し,量子情報理論に基づいて可逆な繰り込み操作が可能である必要十分条件を導出した. 一般の混合状態に対するこうした操作は,情報理論的には混合状態情報源のゼロエラー圧縮とみなすことができる.情報圧縮は情報理論における最も基本的なタスクの1つであるが,量子情報理論において本研究で扱っているような状況における圧縮の限界は知られていなかった.本研究ではminimal sufficient subalgebraと呼ばれる代数構造と代数的量子誤り訂正理論を組み合わせることで,圧縮限界を解析的に導出することに成功した.この成果は現在論文1本として査読審査中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元基底状態の端状態の解析の進展により,非トポロジカルな多体相関の存在と端状態の構造の関係が明らかになりつつある.本年度得られた量子情報理論における繰り込み操作の結果から,後述のように一部のMPOは繰り込み操作が存在しないことが分かるなど,当初の期待とは異なる結果が得られたものの,同じく当初想定していなかった,弱Hopf代数の表現理論とMPOの間の関係が利用できることが分かり,研究は数理的に興味深い展開を見せている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得た繰り込み操作の存在の必要十分条件を元に,一般のMPOが繰り込み可能かどうかを精査したところ,一部のMPOでは繰り込み操作が発散してしまうことを新たに発見した.そこで,現在は繰り込みが収束するようなMPOの分類理論の構築を目指している.特に,近年ではMPOが弱Hopf代数の表現理論と結びついていることが分かりつつあり,この結びつきを利用して,端状態がバルク系のエニオンや非トポロジカルな多体相関に由来する弱Hopf代数によって分類できることを証明しようと考えている.
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