研究課題/領域番号 |
22K13978
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中野 裕義 東京大学, 物性研究所, 助教 (10931884)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 揺らぐ流体力学 / 大規模分子動力学シミュレーション / アクティブマター / 低次元流体 / 非平衡揺らぎ / 非平衡相転移 / 南部・ゴールドストーンモード |
研究開始時の研究の概要 |
自然界に溢れる多くの現象は非平衡である。その非平衡性は熱流や流体の流れのようなものからアクティブマターの自己駆動性まで多岐にわたる。本研究では、これらの非平衡性を統一的に議論する新しい枠組みを構築し、それぞれの系が示す非平衡相転移現象の持つ普遍性の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
1. 揺らぐ流体方程式の数値計算の実装 本研究課題の目標は非平衡定常状態において秩序相が示す普遍的性質を解明することになる。非平衡定常状態のセミマクロスケールでの記述を与える枠組みの一つに揺らぐ流体力学と呼ばれるものがある。揺らぐ流体力学の基礎方程式は通常の決定論的な流体方程式(ナビエ・ストークス方程式や熱伝導方程式、ギンツブルグ-ランダウ方程式)に熱揺らぎを表現する項を付け加えたものである。 2010年代に揺らぐ流体方程式の高精度な数値計算法の開発が進んでいた。この数値計算法を用いて、揺らぐナビエ・ストークス方程式の諸性質を調査した。昨年度から進めている大規模分子動力学シミュレーションとの定量的比較から我々の揺らぐ流体力学の数値シミュレーターの正当性を確認した。 今回実装した数値シミュレーターを元にさまざまな非平衡系(せん断流系・熱伝導系など)の揺らぎの性質の解明を進めている。 2. アクティブマターに見られる協同現象 アクティブマターは1990年代の後半から精力的な調査が始まった新しい非平衡系の一種である。自己駆動力を持つ粒子が多数集まることで、平衡系では見られない協同現象が見られる。自己駆動力が空間的異方性を持つ場合、アクティブマターは1980~90年代によく調べられたdriven lattice gasに類似した協同現象を示すことを明らかとした。この発見に基づき、アクティブマターが古くに調べられた非平衡現象の新しい実験の場となることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に揺らぐ流体力学の数値シミュレーターを実装し、非平衡流体の基礎的な性質を調べることに従事した。この数値シミュレーターはさまざまな非平衡系の物性を調べる基礎を与えるものである。今年度は実装を主に行い現象の解明に遅れが出たが、来年度以降このコードに基づいて研究の発展的加速が期待できる。 また、今年度はさまざまな国際研究会に参加し、アクティブマターなどの新しい非平衡系の情報収集に励んだ。 以上の点で、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に時間を費やした揺らぐ流体力学の数値シミュレーターと昨年度から行なっている大規模分子動力学シミュレーションを組み合わせて、複数のモデルから非平衡定常状態の振る舞いを調べていく。 特に、現在の準備的シミュレーションから固体壁近傍や気液界面などで非線形性が重要な役割を果たすことが示唆されている。固体壁近傍や気液界面は非等方性から理論構築が困難であり、現象の理解が遅れている。来年度はこの領域に注目し、非平衡揺らぎが果たしている役割を解明していきたい。
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