研究課題/領域番号 |
22K13980
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山下 琢磨 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (40844965)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ミュオン / 共鳴状態 / オージェ遷移 / 少数多体系 / エキゾチックアトム / 原子分子理論 |
研究開始時の研究の概要 |
電子の207倍の質量をもつ素粒子「ミュオン」は、水素標的中に入射すると、水素原子の中の電子と入れ替わり、高い励起状態のミュオン水素原子を形成します。ミュオン水素原子は脱励起してやがて基底状態に至ります。近年の実験結果から、脱励起の過程で『電子を纏ったミュオン分子共鳴状態』が形成している可能性が指摘されています。これは、大きな内部エネルギーを持ったクーロン多体擬似核を内包する新しい原子系で、高精度計算によって基礎方程式を解くことによって初めて解明できる量子状態です。本研究では、これまで検討されてこなかった「二原子分子描像」という切り口で、衝突しきい値近傍に存在するこの量子系を研究します。
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研究実績の概要 |
電子の207倍の質量をもつ素粒子「ミュオン」は、水素標的中に入射すると、水素原子の中の電子と入れ替わり、高い励起状態のミュオン水素原子を形成する。ミュオン水素原子は脱励起してやがて基底状態に至るが、近年の実験結果から、脱励起の過程で『電子を纏ったミュオン分子共鳴状態』が形成している可能性が指摘されている。これは、大きな内部エネルギーを持ったクーロン多体擬似核を内包する新しい原子系で、高精度計算によって基礎方程式を解くことによって初めて解明できる量子状態である。さらに、これらの量子状態の存在はこれまでのミュオン原子カスケード過程の理解を書き換える可能性がある。本研究では、これまで検討されてこなかった「二原子分子描像」という切り口で、ミュオン分子と電子の四粒子系を精密計算し、衝突しきい値近傍に存在するこの量子系のエネルギー・寿命、安定性を明らかにする。 本年度は、二原子分子描像を取り込んだ大規模計算のためのコード開発を進めるとともに、擬似核描像に基づいたオージェ遷移確率を計算し、共鳴幅を算出した。後者の計算では、ミュオン重水素分子の共鳴状態波動関数を複素ガウス基底関数により精密に記述し、量子状態間の双極子モーメントの行列要素を計算して求めた。従来の計算では核間距離の期待値の変化から推算されていたが、三粒子系の波動関数をあらわに用いることで近似の精度を向上した。今後二原子分子描像を取り込んだ大規模計算を行い、新しい描像が共鳴幅に与える影響を定量的に議論する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として組み込んでいた理論計算の進展だけでなく、実験グループとの議論を重ねることができ、観測と結びついた理論計算が可能になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
擬似核描像で高いオージェ遷移確率が示唆される量子状態を絞り込むことができたので、今後、これらの状態に特に注目して、二原子分子描像を含めた理論計算を推進する。また、オージェ遷移をあらわに取り入れた大規模計算を実現する。
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