研究課題/領域番号 |
22K13999
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
栗原 綾佑 東京理科大学, 創域理工学部先端物理学科, 助教 (00795114)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 超音波 / 励起子絶縁体 / 構造相転移 / ソフトモード / 電子-格子相互作用 / d電子系 / 電気四極子 |
研究開始時の研究の概要 |
構造相転移やフォノンの不安定性の起源解明は,新奇な量子系の解明につながる可能性が ある.近年,Ta2NiSe5における構造相転移の起源として,電子-正孔対が凝縮する励 起子絶縁体転移が注目を集めた.そこでは,構造相転移で不安定化するフォノンが取り持つ電子-格子相互作用の寄与が提案され,検証課題となっている.そこで本研究では,Ta2NiSe5における電子-格子相互作用が寄与する励起子絶縁体転移の実験的証拠を得るため,音響フォノン観測に長けた超音波計測を駆使し,構造相転移に伴いソフト化するブリルアンゾーン中心の横波音響フォノンと量子系との間に働く電子-格子相互作用のエネルギースケールの解明 を目指す.
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研究実績の概要 |
Ta2NiSe5では,328 Kで生じる構造相転移の起源として励起子絶縁体転移が議論されている.通常,励起子絶縁体転移は電子相関が主導となりバンドが再構成されるが,Ta2NiSe5においては電子-格子相互作用の寄与も提案されており,その大きさの決定が重要な課題となっている.そこで本研究では,超音波を用いてTa2NiSe5およびその元素における置換系構造相転移の弾性ソフトモードを観測し,その解析から電子-格子相互作用の大きさを見積もることを目的とした. まず母物質のTa2NiSe5に着目し,室温以上での弾性定数の測定からソフトモードを調べた.この高温測定のため,390 Kまでの超音波実験が可能となる測定装置を開発した.これにより,構造相転移の活性表現に対応する横波弾性定数C55の巨大ソフト化を確認できた.他方,ソフト化は390 Kにまで及んでおり,正確な電子-格子相互作用の決定のためには,より高温測定が可能となる環境の構築が課題となった. また,励起子絶縁体転移を決定づけるため,転移点直下における超音波吸収係数のコヒーレンスピークの測定を試みた.しかしながら,構造相転移における臨界現象や強弾性ドメインの形成のため,明瞭な超音波信号の測定が不可能であり,ピークの有無は確認できなかった. 励起子絶縁体転移における弾性応答の起源を調べるため,原子力研究機構の関川博士に協力を依頼し,バンド感受率を計算した.その,堅調な軌道の応答を示唆する結果を得ており,論文化を進めている. 上記の研究内容に加え,本研究課題の予備実験としてTaをVに置換した試料を用いた超音波実験を遂行していた.Vドープ系では,化学圧力の効果によりバンドギャップが変化するため,構造相転移が280 K程度まで低下する.これにより,ソフトモード弾性定数C55のソフト化を観測し,電子-格子相互作用の大きさ2500 Kを決定できた.
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