研究課題/領域番号 |
22K14002
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
原口 祐哉 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70808667)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | スピン軌道相互作用 / キタエフ模型 / 新物質 / 低温合成 / トポケミカル合成 / メタセシス合成 / 磁性体 / 遷移金属酸化物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、強いスピン軌道相互作用を有する4d・5d遷移金属化合物における新物質の開発および新奇物性開拓を目指すことを目的とし、その方法としてトポケミカル反応やメタセシス反応などの低温合成法を用いる。本研究では次の3つの目標を掲げ、実行する。(1) 低温合成法が可能な新たな前駆体を探索し新しい4d・5d遷移金属化合物を合成し、さらに、(2) 固体電解質や不活性塩などを用いた新しい低温合成法を開発しさらなる対象物質の拡張を図り、また、(3) 低温合成に基づく特異な配位構造によってスピン軌道結合の効果を制御し、異常物性の開拓を行う。
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研究実績の概要 |
今年度の研究でのもっとも大きな成果は、四面体配位3d8電子系においてスピン軌道結合状態を見出すことに成功したことです。固体メタセシス法の巧妙な速度論的制御によって合成されたスピネル化合物NiRh2O4において、バルク帯磁率測定と比熱測定により、ネール転移温度TN = 45 Kで明確な反強磁性転移が存在することを明らかにしました。合成経路の変更により磁気秩序が発現したことから、従来の試料では磁気秩序が抑制されていたが、高温反応に伴うエントロピー増大によりカチオンミキシングが生じたためと考えられます。また、磁気モーメントの増大は、スピンのみによるS = 1ではなく、Jeff = 0の物理現象によって説明されることが示唆されました。これらのことから、NiRh2O4の磁気秩序を支えるメカニズムは、Jeff = 1の励起子凝縮であり、正方晶の結晶場と超交換相互作用の相互作用によって組織化されていることが示唆されました。 また、Coハニカム格子CaCo2TeO6の磁気特性がRuCl3と同様の磁性を示す有望なKitaev候補物質であることを見出しました。この化合物は、Na2Co2TeO6のNaイオンの半分をCaイオンで置換し、CoO6八面体を効果的に立方体対称に近づけてトポケミカル合成したものです。CaCo2TeO6はNa2Co2TeO6(TN〜27K)よりも低いTN〜13Kで反強磁性秩序を示し、比較的低い磁場〜4Tで磁気秩序が抑制されることから、三角形の歪みを抑制することで非キタエフ相互作用を抑制できることがわかった。また、CaCo2TeO6のワイス温度異方性と単一イオン磁気異方性は、よく知られたキタエフ物質であるα-RuCl3との類似性をさらに示唆しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である4d5d電子系の物質開発は遅れていますが、電子配置の再検討により、八面体配位コバルトや四面体配位ニッケルにおいてスピン軌道相互作用の効果が顕著に現れることがわかりました。これにより、これらの化合物に対する物質開拓を加速できました。さらに、4d5d電子系では、層状岩塩化合物Li4ABO6を前駆体とすることで、初めてダブルペロブスカイト型レニウム酸化物のた固相メタセシス合成に成功しました。
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今後の研究の推進方策 |
今後の物質開発では、4d5d電子系に加えて、電子配置を考慮した3d化合物や4f化合物に焦点を当てる予定です。さらに、層状物質への中性分子の導入手法や、擬カルコゲナイト化合物、擬ハロゲン化合物などの分子アニオン系にも研究範囲を広げます。前年度に発見された層状岩塩からダブルペロブスカイトへのメタセシス反応を利用し、レニウムだけでなくモリブデンやタングステンなどの酸化物を対象に物質開拓を進めます。これにより、新たなスピン軌道結合ダブルペロブスカイトや六方晶ペロブスカイトの探索を試みる予定です。
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