研究課題/領域番号 |
22K14015
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
鈴木 祥仁 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (50822590)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 重合誘起ガラス化 / 重合誘起相分離 / 反応加速 / 不均一性 / バルク重合 |
研究開始時の研究の概要 |
蒸発または化学反応による高分子溶液の濃度変化は様々な現象でおこっており、その重要性が知られている。しかしながら、実験の困難さから研究例は限られる。濃度変化によるガラス化では必然的に速いダイナミクスと遅いダイナミクスが存在し、条件によっては相分離がおこることが指摘されている。本研究では、化学反応により高分子溶液のガラス化をひきおこし、マクロスケールでの相分離も含めた幅広い長さスケールでの不均一性に着目して解析する。濃度変化によるガラス化の特性を明らかにし、化学反応プロセスおよび得られるガラスの物性を制御する指針を見出すことを本研究の目的とする。
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研究実績の概要 |
蒸発または化学反応による高分子溶液の濃度変化は様々な現象でおこっており、その重要性が知られている。しかしながら、実験の困難さから研究例は限られる。濃度変化によるガラス化では必然的に速いダイナミクスと遅いダイナミクスが存在し、条件によっては相分離がおこることが指摘されている。最近申請者はメタクリル酸メチルのバルク重合中に重合誘起相分離が起こることを発見した。この相分離が起こるタイミングは、トロムスドルフ効果と呼ばれる重合中の急激な反応加速と同じであることが明らかになった。本研究では、化学反応により高分子溶液のガラス化をひきおこし、マクロスケールでの相分離も含めた幅広い長さスケールでの不均一性に着目して解析する。濃度変化によるガラス化の特性を明らかにし、化学反応プロセスおよび得られるガラスの物性を制御する指針を見出すことを本研究の目的とした。 本年度の研究では、まずメタクリル酸メチルですでに得られていた実験結果を他のモノマー系でも同様に議論できるかを調べた。エステル部位の異なるメタクリル酸エチルおよびメタクリル酸ブチルのバルク重合挙動を調べ、メタクリル酸メチルの場合との比較を行った。概ね実験データは各ポリマーのガラス転移温度によって整理することができ、トロムスドルフ効果とガラス転移現象の関係性がより強く示唆された。研究結果はPolymer Journal誌に掲載された。 マクロスケールでの物性変化の一例として、重合誘起相分離によるミクロ構造形成と濡れ性の変化について調べた。ポリエチレングリコール存在下でメタクリル酸メチルを重合すると構造が形成され、初期条件によって構造が系統的に変化することを見出した。形成した構造によって濡れ性の制御を行った。成果はACS Omega誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以下の3点を目標として掲げた。(1)メタクリル酸メチルで発見した重合誘起相分離と反応加速にかかわる現象を一般化して理解すること、(2)量子ビームを使用して本現象を解析すること、(3)ミクロスケールの現象とマクロスケールの現象をつなげることである。すでに(1)と(3)に関連した研究を論文発表している。さらに(2)に対応する中性子散乱の実験結果についての論文を投稿中である。特に量子ビームを利用した実験については、中性子実験施設および放射光施設(SPring-8)での実験が予想以上に採択され、新しい実験手法もふくめて、実験の幅が広がっている。すでに興味深い結果が得られており、解析とともにさらに研究が進捗すると期待される。以上のことにより、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記で記載したように、研究はおおむね順調に進展しており、今後も計画的に実験を遂行していきたい。特に量子ビームの実験結果では予想外の結果も得られており、新たな観点からの重合誘起相分離および反応加速の理解が進むと期待される。量子ビーム実験の解析結果を実験室での実験系にフィードバックすることで、さらに研究を促進する。
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