研究課題/領域番号 |
22K14031
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳瀬 宏太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (50844817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 原子核構造 / CP対称性の破れ / 電気双極子モーメント / 原子核シッフモーメント / 原子核殻模型 / 八重極変形 / シッフモーメント |
研究開始時の研究の概要 |
素粒子の標準模型では物質と反物質の対称性であるCP対称性の破れが小さいため、現在の宇宙に反物質がほとんど存在しないことを説明できない。CP対称性の破れを探る有力な手段の一つに、原子の電気双極子モーメント(原子EDM)の探索が挙げられる。もしCP対称性を破る相互作用が存在すれば、「原子核シッフモーメント」と呼ばれる量を通じて原子EDMが生じる。特に、ラジウムなど八重極変形した原子核では、シッフモーメントが大きく増幅されることが期待されている。本研究では、殻模型やモンテカルロ殻模型を用いた原子核多体計算により原子核シッフモーメントを精密に評価し、理想的な増幅が起こるかどうかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
原子の電気双極子モーメントは、標準模型を超えるCP対称性の破れに感度を持つ観測量である。中でも、ハドロンセクターでのCP対称性の破れは、陽子や中性子、原子核の電気双極子モーメントを生じるが、原子中では電子による遮蔽効果が働く。その結果、原子核内部でのCP対称性の破れは、原子核シッフモーメントを通じて生じた原子の電気双極子モーメントが観測可能な量となる。 本研究では、原子核殻模型を用いて原子核シッフモーメントの精密計算を行う。昨年度は、キセノン129原子核の殻模型計算およびモンテカルロ殻模型計算を行い、磁気モーメントと原子核シッフモーメントとの間の強い相関を見出した。これは、キセノン129のシッフモーメントの大きな不定性が、基底状態と第一励起状態の混合に起因することを示している。キセノン129の磁気モーメントは高い精度で測定されていることから、これによりシッフモーメントの不定性を大きく抑制できることを示した。この成果は、Physics Letters Bに掲載された(https://doi.org/10.1016/j.physletb.2023.137897)。 シッフモーメントは、原子核の八重極変形によって顕著に増幅することが期待されている。本研究では、モンテカルロ殻模型により八重極変形した原子核を記述し、シッフモーメントを精密に予言することを目指す。昨年度は、生成座標法を用いてキセノンおよびバリウムについての系統的な計算を行い、現象論的な有効相互作用の構築を進めている。現時点で、四重極変形状態については系統的に再現している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子過剰なキセノン同位体、バリウム同位体については、八重極変形に最も関係の深いネガティブパリティ状態の精度はまだ十分ではないものの、四重極変形に関する低エネルギー状態は系統的に再現することができている。八重極変形が十分に記述できていない理由は、生成座標法において八重極変形の自由度を取り入れていないためであると考えられる。この点は、集団座標として八重極変形を取り入れるか、モンテカルロ殻模型計算により八重極相関を取り入れることにより解決できると考えている。 また、ジルコニウム同位体においてモンテカルロ殻模型を進めており、八重極相関によって現れる低エネルギーのネガティブパリティ状態を記述することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標としては、中性子過剰なキセノン同位体、バリウム同位体のモンテカルロ殻模型により、八重極変形や八重極振動を示すネガティブパリティ状態を系統的に記述することを目指す。また、得られた波動関数を用いてシッフモーメントを評価するとともに、四重極変形と八重極変形の変形共存など原子核構造の詳細な解析も行う。
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