研究課題/領域番号 |
22K14034
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 飛鳥 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 量子場計測システム国際拠点, 研究員 (00884462)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高周波重力波 / 電子g-2 / 望遠鏡 / 重力波 / マグノン / 準安定真空 / アクシオン / 重力波スピンメモリー効果 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、重力波スピンメモリー効果が新しい重力波現象として注目を集めている。また重力波スピンメモリー効果は時空の漸近的対称性や、soft graviton定理などと関連することが示されており、重力波スピンメモリー効果の観測は重力波を用いた物理の検証として大きな意味を持つ。本研究では、申請者が発見した磁場下での重力波とディラック粒子の相互作用を用いて、磁場下での拡張された重力波スピンメモリー効果を定式化する。さらに、拡張された重力波スピンメモリー効果と非等方時空の漸近的対称性、磁場下でのsoft graviton定理との関係を明らかにした上で、物性実験系を利用した重力波検出理論を構築する。
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研究実績の概要 |
今年度は、磁場下での重力波とディラック粒子の相互作用を利用し、新しい重力波観測方法を提案した。
AI, Ryuichiro Kitano, "Macroscopic Quantum Response to Gravitational Waves," JCAP 04 (2024) 068 では、電子のg因子を測るために利用されているone-electron quantum cyclotronが高周波重力波探索に応用可能であることを示した。one-electron quantum cyclotronではランダウレベルの基底状態が(symmetric gaugeにおける)回転対称性により無限に縮退しており、エネルギーを保ったまま波動関数の大きさを変えることができる。このとき重力波による基底状態からの励起が波動関数の大きさに依存することを明らかにした。また、この性質は重力波に特有であり、電場による電子のdipole励起を考えると励起確率は波動関数の大きさに依存しない。したがって量子系を用いた高周波重力波観測の有効性が示された。
さらに、新しい重力波観測方法の構築に向けて、パルサー天体を用いた方法(AI, Kazunori Kohri, Kazunori Nakayama, "Probing high frequency gravitational waves with pulsars," Phys.Rev.D 109 (2024) 6, 063026)や、望遠鏡を用いた方法(AI, Kazunori Kohri, Kazunori Nakayama, "Gravitational wave search through electromagnetic telescopes," PTEP (2024) 2, 023E03)を提案した。これらの研究では、宇宙の磁場環境での重力波-光転換現象に着目し、地球に到来する光の観測で重力波の痕跡を探る方法を示し、背景重力波に制限を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、重力波がone-electron quantum cyclotronに及ぼす影響について研究し、量子系が重力波に対してマクロな反応を示す(重力波による基底状態からの励起が波動関数の大きさに依存する)ことを明らかにした。これは、量子センシングを用いた高周波重力波観測へ向けて新しい方向性を示す結果である。
また当初の研究計画になかった研究も進めることができて、パルサー天体まわりの磁場や、地球磁場、銀河磁場、銀河間磁場における重力波-光転換現象の詳細な研究と、その重力波観測への応用について研究した。 これらの研究成果から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も、新しい重力波探索方法、特に高周波重力波の観測へ向けて様々な観点から研究を進めていく予定である。1つの方向性としては、 AI, Ryuichiro Kitano, "Macroscopic Quantum Response to Gravitational Waves," JCAP 04 (2024) 068, arXiv:2309.02992 [gr-qc] のようにテーブルトップ実験、特に量子センシングを用いた高周波重力波観測について研究を進めていく。また一方で、 AI, Kazunori Kohri, Kazunori Nakayama, "Gravitational wave search through electromagnetic telescopes," PTEP (2024) 2, 023E03, arXiv:2309.14765 [gr-qc]のように望遠鏡を用いた高周波重力波観測の可能性についても、具体的な重力波源を想定した上で、さらに定量的な議論を進めていく予定である。
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