研究課題/領域番号 |
22K14047
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松村 裕二 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (40916847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | η'中間子 / 電磁カロリメータ / ハドロン物理学 / カイラル対称性 / クォーク核物理 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核内部のような高密度環境では真空の変化により中間子質量などハドロンの性質が変化することが予想されており、これを検証することはハドロンの質量獲得機構の理解に繋がる。本研究では、原子核内部にη'中間子を生成し、これが崩壊する事象を捉えることで、核媒質中でのη'中間子質量スペクトルを測定する。η'中間子は最終的に複数の光子に崩壊するため、これらの光子を捉えるために大立体角電磁カロリメータを用いる。終状態の全光子のエネルギー・運動量を高分解能で測定することで、核媒質中におけるη'中間子の不変質量スペクトルの変化を直接的に調べることができる。
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研究実績の概要 |
本研究は大立体角電磁カロリメータを用いてη'中間子の原子核内崩壊の測定を行い、核媒質中でのη'中間子質量スペクトルの変化を調べることを目的としている。原子核中のような高密度環境では、カイラル対称性が部分的に回復することによりη'中間子の質量が大きく減少することが多くの理論モデルにより予測されている。本研究では原子核中で生成されたη'中間子の崩壊粒子の四元運動量から再構成される不変質量分布を調べることにより、質量スペクトルに対する核媒質効果を実験的に確認することを目指している。先行研究では炭素標的から光生成されたη'中間子のγγ崩壊モードの質量スペクトルを高分解能電磁カロリメータ BGOegg を用いて測定し、低運動量事象に核内質量変化の兆候を見出したが、背景事象が多く統計量も十分でないため核内質量変化の確実な証拠とはならなかった。本研究では、より核媒質効果に対する感度の高い銅標的を用い、BGOegg の前方に新たな電磁カロリメータを設置することでアクセプタンスを増やし背景事象を大きく減少させるなどのアップグレードを行っている。本年度は、主に前方電磁カロリメータなどの検出器系整備、データ収集回路系のアップグレード、光子ビーム強度増強のためのレーザーシステムの整備、コミッショニングデータ取得等の実験準備を進め、2月には物理データの収集を開始した。前方電磁カロリメータについては宇宙線データや光子ビームを用いたコミッショニングにより出力信号に問題のあるチャンネルが複数見つかったが、個別調査により原因を特定し光電子増倍管の交換等の対処を行うことで問題は解消された。2月に取得したデータは予備解析により物理データとして問題ない質で取得できていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前方電磁カロリメータにおいて出力信号に異常があるなどの問題が見つかり、その対処に時間がかかった。また、データ収集回路系においてもノイズや機器故障などの問題が多く発生し、物理データ取得までの実験準備に当初の想定以上の時間がかかった。一方、今年度中に多くの問題は解消され物理データの収集を開始できた。また、物理解析の準備は比較的順調に進んでいる。 以上を踏まえ、全体の進捗状況としてはやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き物理データの収集を続ける。同時に検出器較正などの基礎解析を進め、取得データのクォリティを確認し物理解析に必要な統計量のデータを蓄積する。その後η'->γγ崩壊の不変質量解析を進める。
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