研究課題/領域番号 |
22K14073
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
道山 知成 大阪大学, 大学院理学研究科, 特任研究員(常勤) (40910823)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 天文学 / 宇宙線 / 宇宙物理 / プラズマ科学 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙史解明において、超巨大ブラックホール周辺物理の解明は重要である。そのためには、基本物理量を知る必要がある。例えば、 ブラックホール質量計測から、巨大ブラックホールと母銀河の共進化関係が明らかになってきた。一方で、母銀河の進化と関連する相対論的ジェットの駆動機構や、 降着円盤コロナの生成機構は未解明である。これらを解明する鍵となる物理量が、 ブラックホール近傍の降着現場における磁場であるが、測定は容易ではない。本研究では、さまざまな銀河のセンチ波からミリ波の電波スペクトルを決定し、観測量を元に超巨大ブラックホール周辺の磁場を測定し、巨大ブラックホール周辺での粒子加速機構の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究は、ALMA望遠鏡を用いて近傍銀河の中心にあるブラックホール周辺の高温プラズマにおける粒子加速現象の解明することを目的としている。メインとなるALMA 観測データの解析を行い、論文を執筆した。特に、研究実施計画において、「磁場測定方法の改良・母銀河成分除去」に関する論文に注力した。先行研究ですでに同様の手法で磁場強度が測定されていた近傍活動銀河核NGC1068を再解析した。そこで、100GHz帯の新しい観測点が先行研究よりも明るいことに気がついた。そのため、再解析の内容の報告が優先度が高いと判断し、優先して論文を執筆した。また、中心核以外の点であるjetにおける粒子加速の可能性が示唆される結果が得られたので、その可能性を指摘する論文を執筆した。ALMAのサーベイ観測のデータを確認している最中に、100GHz帯の明るさが時間変化している天体を発見した(GRS 1734-292)。電波強度の時間変化は、放射起源が「コンパクト」であることを示しており、ブラックホール周辺の高温プラズマが起源であると考えると辻褄が合う。この結果も重要であると判断し、サーベイ論文よりも優先して論文を執筆した。
さらに、NGC1068のデータを解析している最中に、超新星SN2018ivcのミリ波再増光を発見した。本研究の主目的とは離れるが、非常に珍しい現象であり報告の必要性が高いと判断し、関連研究として解析を優先した。理論モデルから、爆発直前の大規模な質量放出で再増光が説明できた。超新星爆発の研究の専門家らと協力して論文を執筆した。
その他の近傍活動銀河核においても、VLAとALMAのアーカイブデータを確認し観測が必要な天体に関しては観測提案書を準備した。すでに観測が終えているデータに関してはALMAの解析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NGC1068のjetにおける粒子加速を提案する論文を、2022年9月に出版した。NGC1068に関する磁場測定に関しては、2022年度内に執筆が終了し査読論文として投稿したが、査読者からのコメントにより、重大な改善点が判明したため、現在も改訂を進めている。概ね査読者も出版に向けて好意的な姿勢を示しているため、2023年度内に出版する目処はたっている。GRS 1734-292に関しては、論文のドラフトはすでに作成済みである。現在、共同研究者からのコメントを受けて改訂中であり、2023年度内に査読論文として投稿する目処はたっている。また、関連研究の超新星爆発に関する研究課題は、すでに2023年3月に出版した。本研究課題のPIは第二著者として論文出版において貢献している。
これらを総合的に判断し、NGC1068の磁場測定のために解析したデータにおいて、「jetにおける粒子加速の可能性」と「超新星の電波再増光」という2点の予期していなかったが、研究課題として非常に重要な結果が得られたため、当初の研究計画から優先順位を変更した。また、主目的である研究課題に関しては、論文査読者からのコメントを受けて再解析を行なった。これらの2点において、研究スケジュールに変更があったが、研究成果は論文化の目処が立っているため、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最優先課題として、NGC 1068とGRS 1734-292における磁場測定に関する論文を最優先に実施する。そのためには、論文の査読者からあげられている問題点を解決することが最優先課題である。また、ALMA望遠鏡の観測に関しては、随時観測提案書を提出し、追観測を提案する。また、これまでの研究から、ブラックホール周辺だけでなく、母銀河の性質を正しく理解することも本研究課題の遂行には必要であることが判明した。そのため、母銀河の分子ガス観測等も積極的に提案していく。
また、中心核領域におけるミリ波の「時間変化」を捉えることは、本研究課題の遂行する上で最重要である。そのため、これまでのアーカイブデータを網羅的に連続波時間変化に着目して再解析する。
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