研究課題/領域番号 |
22K14074
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高棹 真介 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (90794727)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 磁気流体力学 / 星形成 / 降着円盤 |
研究開始時の研究の概要 |
原始惑星系円盤のガス散逸には、星からの紫外線とX線が駆動する光蒸発が特に重要だと考えられている。しかし、観測的制約から円盤ガス散逸を制御する星近傍構造が謎となっている。本研究は星の磁場・降着由来の放射の性質を磁気流体シミュレーションと理論計算をもとに明らかにし、円盤のガス散逸過程を決定づける内側境界条件を第一原理的に与える枠組みを構築する。
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研究実績の概要 |
古典的T Tauri星の多くが示している磁気圏降着についての3次元磁気流体シミュレーションを実施し、降着流と噴出流の3次元構造を調査した。また磁気圏の大きさを決める機構についても理論的に考察し、シミュレーション結果と整合的な理論式の導出に成功した。近年の高時間分解能観測によって降着率が1日よりも十分短い時間スケールで変動していることが明らかになってきたが、その起源を説明する理論モデルはこれまでなかった。それに対し本研究は、高解像度3次元シミュレーションをすることで、降着流自体に乱流由来の時間変動が加わることを示すことができた。これは円盤内や円盤上空大気で生じている乱流の広がりなどの性質を明らかにする上で重要な結果である。また我々のシミュレーションは、乱流的なプラズマ噴出流が磁気圏周りで生じていること、そしてその乱流的な流れが降着流の角運動量を効率的に引き抜いていくことを示した。磁気圏周りのプラズマ噴出流が角運動量を引き抜いていく可能性は過去の2次元軸対称モデルからも言われていたが、我々の3次元モデルは2次元モデルの期待よりも多くの角運動量が引き抜かれることを示した。その理由は2次元モデルには乱流的な噴出流が存在しないためである。つまり我々の結果は星の角運動量進化法海にとっても3次元性が本質的に重要であることを示している。また星周りのガス分布もシミュレーションで計算されていることから、その分布をもとに星の放射がどの程度掩蔽されてしまうかについても議論した。この結果は星由来のX線やUV放射がどの程度10-100auスケールの円盤に到達するかを理解する上で鍵となる。これらの成果はTakasao et al. 2022 ApJとして出版されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハッブル宇宙望遠鏡によるサーベイ観測プロジェクトULLYSESが実施されていたが、TW Hyaに関する観測のまとめが論文出版される前に我々は3次元磁気流体シミュレーションの結果を論文として発表することができた。世界に先駆けて磁気圏降着のモデルを提唱しようと計画していたため、その点で概ね順調に進展していると言える。ULLYSESを進めてきた海外の観測家たちとも議論を進めており、今後の観測的検証やモデルの発展についても期待がある。 また、まだ論文出版には至っていないものの、計画の1, 2年目で完了を予定しているXUV放射スペクトルの理論モデルも構築しつつある。ただし多種イオンを考慮したモデル構築を進展させる時間的余裕がなかったため、この点については改善の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は観測との比較に向けて、現在までに得た3次元シミュレーションの結果をもとにULLYSES関係者たちと観測結果の解釈を進めていく。またいまの磁気流体モデルの熱構造や化学種分布をより現実的に議論することができるよう、化学反応計算をモデルに取り入れる。熱構造は円盤風の構造に関わるので、遠方に到達するXUV量の決定に重要となる。これまで双極子磁場を持った星への降着計算を行ってきたが、TW Hyaで示唆されているような八重極子磁場をもつ星のモデル計算も実行していく。そして降着衝撃波由来のXUV放射の理論モデル構築も進めていく。
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