研究課題/領域番号 |
22K14119
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
神谷 奈々 同志社大学, 理工学部, 日本学術振興会特別研究員(PD) (20886254)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 未固結堆積物 / 圧密 / 岩石磁気 / 堆積残留磁気 / テクトニクス |
研究開始時の研究の概要 |
岩石に記録された過去の地球磁場を読み解く研究は,地磁気の逆転記録に基づく地質年代の決定(チバニアンの制定)や古地磁気方位に基づくプレート運動の解明など,地球の歴史を解き明かす上で重要な役割を担ってきた.こうした研究に有用な情報は,岩石に含まれる磁性鉱物に記録されるが,この情報が岩石の発達過程でどのように変化するのかは明確になっていない.本研究では,堆積物の圧密実験手法を新たに確立し,圧密実験と古地磁気解析を組み合わせて,堆積物が岩石になる過程において磁気情報がどのように変化するかを解明する.さらに,圧密過程を考慮した古地磁気解析の新たな研究手法を確立し,テクトニクス研究の新展開を目指す.
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研究実績の概要 |
過去の地球磁場の情報は岩石に記録されるため,その情報を元に地質年代の決定やプレート運動の解明など,地球の歴史が紐解かれてきたが,岩石に記録される過去の地球磁場の情報は,岩石の生成過程で上書きされる.堆積岩の場合,圧密や褶曲といった堆積岩の発達過程で岩石に含まれる磁性鉱物が回転する可能性があるが,過去の地球磁場の情報である残留磁化を担う磁性鉱物の動きがいつ固定されるのかは明確になっていない.そこで本研究では,堆積物に記録される残留磁化に着目し,未固結から半固結状態の堆積物の残留磁化が圧密過程でどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした. 本年度は,半固結の堆積岩として堆積軟岩である房総半島に位置する前弧海盆堆積物を試料とし,圧密実験を実施した.岩石試料を圧密試験機により人工的に圧密させ,その前後の磁気異方性を比較した.磁気異方性の比較の際は,鉱物種や粒子サイズの異なる磁性鉱物の異方性を推定するために,初磁化率の異方性(AMS)と非履歴性残留磁化(ARM)を併用した.また,試料に含まれる磁性鉱物の特徴を把握するために振動試料磁力計(VSM)を用いて測定を行い,ヒステリシス曲線を得た.その結果,試料に含まれる磁性鉱物の最大軸および中間軸の方向が圧密によって回転している様子が捉えられ,それにより線構造と面構造の発達度合いが両者ともわずかに弱まる傾向が見られた.ARMの測定結果は,圧密前後でほとんど変化しなかったが,本供試体と同一層準の試料が示すヒステリシス曲線は,磁性鉱物の寄与が大きいことを示しており,今回ARMに変化がみられなかったのはそのためと考えられる.本年度の研究では,「半固結状態である堆積軟岩であっても,圧密により磁性鉱物が回転する余地が残されている」という,今後,未固結の堆積物を対象に検討を進めて行く上で重要な知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,初年度に未固結堆積物に対応した圧密試験機(K0圧密試験機)を構築予定であったが,圧密容器の作製を依頼した業者の都合(受注過多)により,圧密容器の作製が困難になった.そこで予備実験として,これまでに確立した圧密試験手法を用いて,軟岩の圧密実験に取り組んだ.その結果,岩石磁気の測定過程における技術的な課題が見いだされた.現在,その課題解決にむけた技術的な工夫を実行している状況である.本研究は,工学的な圧密実験と理学的な岩石磁気測定を組み合わせた新しい研究であるため,実験過程,測定過程で技術的な課題が見いだされる予想があったが,予備実験によりその課題が明確になり,解決に向けた手立てを講じている状況のため,研究はおおむね順調であると判断できる.また,軟岩による予備実験の結果からは,圧密実験により磁気特性が変化する可能性が示唆され,未固結堆積物に対応した圧密実験装置の必要性を再確認するに至った.
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今後の研究の推進方策 |
まず,昨年度達成できなかったK0圧密試験機の構築に着手する.研削を伴う供試体の作製が困難な未固結堆積物の圧密実験が可能になるよう,油圧で側方圧を制御できる圧密試験機を構築する.新たに圧密容器を作製し,既存の一軸圧縮装置により載荷できるシステムを整備する.予備実験で用いた軟岩等を供試体として,試験運転を行い,実験機構を確立する.その後,本試験機を用いて,圧密試験と磁気測定を組み合わせた圧密実験を行う.圧密試験の前後で,初磁化率の異方性,非履歴性残留磁化および等温残留磁化の異方性を測定し,圧密前後での特徴を比較することで,圧密により磁気異方性がどのように変化するかについて考察を行う.さらに,圧密量や載荷速度など,試験条件を変化させ,挙動の違いを比較・検討し,圧密量と磁化ベクトルの関係を定量的に評価する.試料には,房総半島や南海トラフで採取された未固結から半固結状態の堆積物を用いる.房総半島の試料の場合は,地質構造を考慮した上で,サンプリングにより泥質岩を採取する.南海トラフ等で採取された堆積物については,必要な手続きを経た上で,高知コアセンターに補完されたコア試料のサンプリング作業を行う.得られた成果は,国内外の学会等で発表し,専門分野の研究者らと議論を重ねて研究の発展に努め,また国際誌に投稿し研究成果を広く公表する.
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