研究課題/領域番号 |
22K14131
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 秋田大学 (2023) 国立研究開発法人海洋研究開発機構 (2022) |
研究代表者 |
中尾 篤史 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (00817249)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | マントル対流 / データ同化 / 逆問題 / トレーサ粒子 / 部分的観測 / 微量元素同位体 / 岩石の溶融 / 超臨界流帯 / 数値シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
マントル対流は,プレート運動,地震・火山活動など,諸現象の原動力である.しかし,マントル対流が過去から現在までどのように駆動してきて,将来どのように終焉するのかは未解明である.マントルの歴史(岩石の脱水・溶融・輸送・混合などの諸過程)を知るためには「地球化学的トレーサ」(岩石中の放射性微量元素)が有用である.本研究では,最新の実験・データ解析に基づき,「地球化学的トレーサ」をマントル対流の数値シミュレーションに導入することで,地球マントルの対流構造の変遷を明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究は,流体力学の数値シミュレーションに基づき,地球マントルの対流構造の変遷を明らかにすることを目的としている.本研究の申請当初は,「地球化学トレーサ」を既存のマントル対流のフォワードモデルに組み込み,実行し,その結果を解釈する,というアプローチを計画していたが,「地球マントルの運動履歴を間接的に反映した観測データ」をもとに逆問題的にそれを解く手法がより目的に適うと考え,1年目より,アジョイント法を用いたマントル対流のデータ同化コードを一から構築する運びとなった.
1年目は,「地球マントルの運動履歴を間接的に反映した観測データ」として,地球表面(プレート)の運動速度の時系列,最終ステップにおける温度場,最終ステップにおける地球化学トレーサの分布などを対象とし,これらの観測データを説明するように,未知数,すなわち,過去におけるマントルの温度,流動速度,地球化学トレーサの時空間分布を拘束するための逆問題手法を構築した.2年目において,本手法を査読付き国際学術論文として発表した.
2年目はこれに加えて,マントル中に存在する地球化学トレーサのように,高粘性流体の流れに沿って受動的に移流するトレーサ粒子の情報(位置の時系列やその時間微分)をもとに,その流体の温度構造や流動,およびそのプロセスを逆問題として解く理論およびアルゴリズムを開発し,人工データを用いたテストにより有効性を確認した.本件について,論文を執筆中である.さらに,トレーサ粒子を活用するこの逆問題手法を,トレーサ粒子を含む高粘性流体の室内対流実験で撮像されたデータに応用し,その運動を精度良く再現できることを確認した.流体の運動を再現するのみならず,実験で観測することの難しい温度構造を定量推定するという画期的な成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トレーサ粒子に記録された情報から周囲の対流プロセスを復元する逆問題手法を開発し,有効性を示したことで,「地球化学トレーサに着目して地球マントルの対流構造の変遷を明らかにする」という目標に当初の想定以上に近づいた.一方で,当初想定していた部分溶融や脱水反応に対応する地球化学トレーサのモデリングには至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
3年目においては,2年目に取り組んだ (1) トレーサ粒子情報から熱対流を復元する理論研究,および (2) トレーサ粒子情報から熱対流を復元する逆問題手法を室内実験に適用する実証研究,の2つの研究を査読付き国際論文としてまとめる.部分溶融や脱水反応に関するアジョイント方程式を導出することは大変に難しいため,地球化学トレーサのモデリングは従来通りフォワード問題の範囲で検討する.
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