研究課題/領域番号 |
22K14132
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
松井 浩紀 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (90823253)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 南極前線 / 更新世 / 有孔虫 / 自動分類 / 古環境 |
研究開始時の研究の概要 |
南極の海が地球環境に及ぼす影響は大きく,その将来を予測するには,過去の変動を明らかにすることが重要である.本研究は南極の海の表層における南極前線(寒冷な水塊と温暖な水塊の境界)に着目し,過去150万年間を通じた前線の変遷史を明らかにする.さらに,約125~70万年前に生じた気候寒冷化との関連を解明する.そのために,近年実用化された微化石自動分類システムを活用し,プランクトンである浮遊性有孔虫の化石群集組成を効率よく推定する.
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研究実績の概要 |
本年度は(1)有孔虫化石の自動分類モデルの精度向上,(2)堆積物試料の年代目盛の確立,(3)長期的な南極前線の位置復元にそれぞれ取り組んだ.(1)有孔虫化石の自動分類モデルについて,産業技術総合研究所の微化石自動分類システムを用いて,9項目合計約4500枚の学習画像を追加取得した.学習画像から構築した分類モデルを別に用意したテスト画像に適用したところ,適合率および再現率は目標の90%におおむね到達した.一方,未知試料の画像に適用したところ,適合率および再現率は大きく低下した.今後学習画像を再度整備し,未知試料の画像に対する分類精度の向上を目指す.(2)堆積物試料の年代目盛について,追加で約200試料から底生有孔虫化石Melonis pompilioidesを抽出し,高知大学海洋コア国際研究所にて炭素酸素安定同位体比を分析した.得られた酸素同位体比変動曲線について,標準変動曲線LR04と精密な対比を行い,堆積物試料最下部の年代推定を約150万年前から約110万年前に改めた.堆積物試料の特徴的な岩相であるマット状の珪藻が,想定よりも速い堆積速度で堆積していることが示唆された.過去110万年間について,予想よりも高時間解像度で南極前線の位置を復元できる可能性が高い.(3)南極前線の位置復元について,従来の手法(人による分類)で約140試料から過去約110万年間の浮遊性有孔虫群集を解析した.約110万年前から40万年前には寒帯種Neogloboquadrina pachydermaが優占するのに対して,約40万年前から現代にはN. pachydermaと温帯種Globigerina bulloidesが入れ替わりで優占した.南極前線が約40万年前に大きく南下したこと,それ以降は南北移動を繰り返したことが示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有孔虫化石の自動分類モデルについて,テスト画像に対する適合率および再現率は90%に達したが,群集解析のための未知試料に対して十分な正答率を得られなかった.誤って分類した画像を見直し,学習画像を再度整備することで,分類モデルの確立を目指す.一方,堆積物試料の年代目盛については,有孔虫化石の炭素酸素安定同位体比分析を予定通り実施することができ,試料の年代目盛を確立することができた.さらに,過去約110万年間の南極前線の位置復元について,予察的ではあるが長期的な変動を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
有孔虫化石の自動分類モデルについて,学習画像を再度整備することが必要と考えている.具体的には,分類モデルが誤って分類してしまう画像について,人が再度分類し学習画像に追加する.また,分類モデルが着目している部位をヒートマップにより可視化し,どのような画像を誤って分類する傾向にあるかを判断する.南極前線の位置復元について,詳細に過去110万年間の浮遊性有孔虫化石群集の解析を進める.さらに,南大洋インド洋区の本研究の結果と,南大洋大西洋区の先行研究の結果を比較し,広域的な南極前線の挙動を明らかにする.最終的に,中期更新世遷移期の気候寒冷化との関連を明らかにする.
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