研究課題/領域番号 |
22K14136
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮嶋 佑典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (60826056)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ニッケル / 安定同位体 / メタン生成菌 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
生体金属ニッケル(Ni)は微生物によるメタン生成反応の中核を担う。その優れた指標性と保存性から、Niの安定同位体比は現在と過去のメタン生成菌の新しい活動指標(バイオマーカー)として利用できる可能性がある。本研究では、メタン生成菌がメタン生成活動によって軽いNi安定同位体をどのように、どの程度細胞内に濃縮し、同位体分別が生じるかを解明するとともに、メタン生成菌の生息する実環境試料を用いてNi同位体比のバイオマーカーとしての有用性を検証する。太古代岩石のNi同位体比を調べることで、地球初期のメタン生成菌の活動の有無を示す化学的根拠を提示する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、①メタン生成菌の培養テストと②Ni安定同位体比の分析体制の整備を行った。①では、代表的なメタン生成菌2種を水素資化型・メチル基栄養型の2つの経路で培養した。培養後の菌体を培地から遠心分離したのち、繰り返し酸加熱処理を行うことで分解し、菌体に含まれるNi濃度をICP-MSで測定した。菌体の乾燥重量とNi濃度をもとに、同位体比分析に必要な菌体量を見積もった。培地にNiを添加することで、メタン生成速度や菌体中のNi濃度が増加することが確かめられ、かつ同位体比分析に十分な菌体量を得ることができた。②では、分析前処理としてキレート抽出法による遷移金属の抽出と、陰イオン交換法によるNiの分離精製を習得し、多元素標準溶液を用いてテストを行った。Ni同位体比測定に必要な国際標準物質および同位体スパイクを入手して酸分解し、標準溶液を作成した。2種類の同位体スパイクを混合し、分析時の同位体分別を補正するためのダブルスパイクの調合を行った。今後は、実試料(菌体・培地)と近い組成をもつ標準物質を用いて前処理と同位体比分析をテストしたうえで、実試料の分析を行う。メタン生成菌によるNi同位体分別機構解明のための第1段階として、酢酸発酵型を含む3つのメタン生成経路すべてについて分析を行い、経路の違いによるNi同位体分別の違いを明らかにする。また、同位体分別係数を精確に算出するため、培地と菌体のNi濃度・同位体比の時系列変化を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では培養テストと前処理・Ni同位体比測定のための準備を中心に行い、分析に必要な菌体量の見積りと基本的な前処理法(酸処理・Ni分離精製)の確立がおおむね完了した。メチル基栄養型培養では、同位体比分析に十分な菌体量を得ることができたが、水素資化型培養では十分な菌体量を得ることができていないため、培地の基質・Ni濃度の再検討が必要である。Niの分離精製は、多元素標準溶液を用いたテストには成功したが、実際の菌体や液体培地と同じマトリックスを持つ標準物質を用いたテストも行ったうえで、同位体比を測定する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、メタン生成菌の培養に用いた液体培地、およびNi濃度や同位体比が既知な標準物質(生体・海水)を用いて、Ni分離精製と同位体比分析のテストを行い、実試料分析用に前処理法の調整を行う。水素資化型、および酢酸発酵型の経路でメタン生成菌を培養し、3つの経路すべてについて同位体比分析に必要な菌体量を確保し、分析を行う。メタン生成経路によって、関与するNi含有酵素の種類が異なるため、経路の違いがNi同位体分別に与える影響を明らかにする。培地及び菌体の経時的なサンプリングを行い、Ni濃度と同位体比の時系列変化をふまえて同位体分別係数を算出する。
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