研究課題/領域番号 |
22K14148
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
荒川 仁太 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 研究准教授 (80882018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 疲労強度 / 疲労き裂 / 摩擦攪拌接合 / レーザパターニング / レーザ接合 / 接合継手 / 金属疲労 / レーザ溶接 / ガラス繊維強化 |
研究開始時の研究の概要 |
①品質管理上,メンテナンスをし易い高信頼性を確保すること ②高耐久性能を有するレーザ接合継手を開発すること の2点を十分に満足する技術的なアプローチが必要であるということである.そこで,レーザを試験片表面に照射することで凸凹のパターニング形状を活用した.レーザパターニングを施した2枚の薄板鋼板の片側表面の凹部にその径よりも小さな直径を有するEガラス長繊維を溝に散りばめていき,レーザ接合を施工する.この効果はき裂進展経路が母材となるため,高信頼性を確保できる.実験内容としては,疲労寿命曲線と三次元き裂観察による定量的検討によって疲労破壊メカニズムおよびガラス架橋型の効果を明らかにする.
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研究実績の概要 |
レーザ溶接継手での疲労強度向上効果に先立ち,摩擦攪拌接合(FSW)継手の疲労強度評価を実施している.同接合は他の接合方法に比べ,添加材が不要であることや異なる材料同士の接合も可能であることなどの多くの利点があり,中でも特性上溶接が難しいアルミニウム合金の接合に適している.そのため,自動車産業などでは,車体の軽量化に向け,アルミニウム合金,そして摩擦攪拌接合のさらなる導入に力を入れている.そこで本研究では,A5052の重ね合わせ摩擦攪拌接合継手の疲労強度評価として,EBSD解析,ビッカース硬さ,静的引張試験,疲労試験,弾塑性解析を行った.ビッカース硬さを調べたところ,フッキング付近から接合部中心にかけて母材に比べてビッカース硬さが低くなっていることがわかった.静的引張試験では,2回のうち,どちらもRS(ツール進行方向と回転方向が逆)側で破断し,破断の仕方も同様だった.フッキング先端ではなく,先端の少し手前から破断していることがわかった.疲労試験では,0.7kN~0.5kNにかけて急激に疲労寿命がのび,疲労限度は0.5kNとなった.また破断の仕方はRS側で破断するものの,引張試験の場合とは異なりフッキング部先端でき裂が発生し,そのき裂が進展し最終的に延性破壊を呈していることが確認された.また,詳細なSEMによる破面観察では,一方の端から疲労き裂進展が生じ,複数のき裂が合体しながら接合部表面に向かって成長していき最終的に延性破壊を呈する.なお,FEM弾塑性解析では,フッキングを考慮しない理想的なモデルを作成し,変位を指定することによる引張試験の解析を行った.その結果,上板と下板の隙間の先端ではなく,その少し手前でミーゼス応力は最大となることから,そこからき裂が発生すると考えられ,実際の引張試験においても同様の場所から破断していたことから同継手の破断特性が再現可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではレーザ接合継手の疲労強度を向上する手法としてガラス繊維を配合することとした.それに先立ち,溶接形状の観点からその疲労強度評価が容易である摩擦攪拌接合(FSW)継手の強度評価を実施した.結果としては,摩擦攪拌によって形成されるスリット近傍のフッキング形状が疲労き裂発生起点となり得ること,また最終破断はフッキング後方から生じることを明らかにした.また,解析的な検討によってフッキングの後方から静的な破壊が生じる現象を再現可能となった.これより,スリット近傍から発生する疲労き裂の進展を阻害する目的で,Eガラスをスリット近傍に配置した解析モデルを作成し,FEMの弾塑性解析を実施した.その結果,スリット近傍での応力が緩和される傾向があることがわかった. ここまでの結果から,接合継手のスリット近傍にガラス繊維を配置することの有用性を明らかにできたが,レーザ溶接継手のようにスリット近傍が直線的でなく滑らかな形状になっている場合ではその効果は不明である.今年度はFSW継手の評価と同様にレーザ接合継手の疲労強度評価を実施し,ガラス架橋効果の有用性を明らかにしていく.ここまで,接合材においてガラス架橋の有用性を示せたこと,且つ試験方法を確立できたことから,進捗状況は概ね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後はレーザ接合継手に関して,その疲労強度及び破壊メカニズムを微視的に観察する.疲労試験には微小荷重(~200N)を付与できる軸力の疲労試験機を用い,微視的な観察には高精度なCCDカメラによって疲労き裂発生・進展をその場観察する予定である.また,疲労き裂発生箇所を定量的に評価するため,弾塑性有限要素解析及びデジタル画像相関(DIC)解析を実施する.その後,ガラス繊維の架橋効果を実験的・解析的に検討し,その有用性を明らかにしていく. レーザ接合は外部企業に委託する予定で,疲労試験や微視的な観察は本研究室で実施する.さらに,本評価では疲労き裂の発生・進展を微視的に観察するため,試験片形状をかなりコンパクトなものにした(5mm×30mm四方).この試験片を使用して,試験を進めていく予定である.
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