研究課題/領域番号 |
22K14155
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 光桜 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (90914664)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 耐熱CFRP / 長期耐久性 / 有限要素解析 / 粘弾性 / FEM |
研究開始時の研究の概要 |
CFRP積層板の寿命予測に関する従来研究では,一定の疲労負荷下,クリープ負荷下などある限定された環境におけるmmスケールの耐久性の議論に留まっており,例えば繰り返し負荷中の周波数や応力比を試験中に変化させた場合や温度を途中で変化させた場合など,組み合わせ負荷を経験した際の耐久性が定量化されていない.本研究は,CFRP積層板が組み合わせ負荷(疲労負荷後引張,クリープ後衝撃など)を受けた際の劣化を材料中のエントロピー生成量により記述し,積層板内に生じるμmスケールのトランスバースクラック発生メカニズムを解明した上で,CFRP積層板の劣化・寿命を数値シミュレーションで定量的に予測する.
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研究実績の概要 |
本研究では,耐熱CFRP積層板が組み合わせ負荷(疲労負荷後に引張負荷を受けたり,クリープ負荷後に衝撃負荷を受けたりするなど)を受けた際の劣化を材料中のエントロピー生成量により記述し,積層板内に生じるマイクロメートルスケールのトランスバースクラック発生メカニズムを解明した上で,耐熱CFRP積層板の劣化・寿命を数値シミュレーションで定量的に予測することを目的としている. 2022年度では,耐熱CFRP積層板のトランスバースクラック発生を実験的に捉えるために,0°と90°方向に繊維が配向された直交積層板を作成し,常温にて周波数の異なる複数条件の繰り返し負荷試験を実施した.実験では,アコースティックエミッション(AE)波という破壊に伴って発生する弾性波の検出およびマイクロスコープでの観察にて,90°層内の任意の場所に発生するトランスバースクラックを特定した.この手法により,異なる周波数におけるクラック発生数の依存性も確認し,周波数が低いほどクラック数が少なくなる傾向を確認した.また数値解析的な検証として,ミリメートルスケールのCFRPモデルに周波数の異なる繰り返し負荷を与えることで,実験結果の検証シミュレーションを行った.実験と解析結果との比較により,繰り返し負荷を受けた際の材料劣化を材料中のエントロピー生成量により記述した数理モデルが実験結果の傾向を捉えていることを確認した. 上述の研究成果は,国際学会1件として報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,耐熱CFRP積層板に対し,常温および250℃程度の高温それぞれにおいて疲労負荷後引張試験,クリープ後衝撃試験などの組み合わせ負荷試験を実施する予定であった.しかしながら,積層板の90°層内任意の場所に発生するトランスバースクラックを特定することは想定より困難であった.そのため,今年度では常温の繰り返し負荷試験のみに限定し,トランスバースクラック特定手法の確立に注力した.また,次年度以降に着手予定だったミリメートルスケールの数理モデル開発の枠組み作成に取り掛かり,これを用いて実験結果との比較検証を先行して実施した.その検討より,今後の研究方針を得た. 研究計画の一部変更により,当初予定していた実験の一部の達成には至らなかったが,本年度で得られた結果に基づき,次年度に達成予定である. 以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度では,2022年度で達成に至らなかった高温環境下での疲労負荷後引張試験,クリープ後衝撃試験などの組み合わせ負荷試験を実施し,それぞれの条件におけるトランスバースクラック発生を実験的に捉える.また,トランスバースクラックと材料のエントロピー生成量を関連付けるために,実験条件に準ずる数値シミュレーションをマイクロメートルスケールのCFRPモデルで実施し,トランスバースクラック発生挙動について実験結果と比較検証することにより,損傷を定量化する. 提案した数理モデル,実験結果についての結果を取りまとめ,国際学会および論文発表を行う予定である.
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