研究課題/領域番号 |
22K14162
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鬼頭 亮太 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40909579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 切削シミュレータ / ポリゴン / 切削力 / 5軸マシニングセンタ / 3Dモデル / Vattiクリッピング / ブール演算 / 積層 / 3次元化 / 3面図 / 三面図 |
研究開始時の研究の概要 |
切削加工中の状況をPC上でシミュレーションできる切削シミュレータは,高い精度を維持するためには多くの計算時間を要するのが現状であり,精度と計算量にトレードオフ関係がある.そこで本研究は,切削シミュレータ上で使用する3Dモデルとシミュレーションの計算方法を改良することによって,高い精度と短い計算時間を両立できる切削シミュレータ開発を行う.そして,工作機械の複雑な動作に対して瞬時に加工中の異常振動であるびびり振動の発生の有無を判断できる切削シミュレータ開発を行う.また,シミュレーション結果を工作機械の動作生成プログラムにフィードバックし,びびり振動が発生しない工作機械動作の生成を行う.
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研究実績の概要 |
本研究は高速高精度切削シミュレータ開発を目的に行っている.これまでの研究で2次元ポリゴンを積層させ,3Dモデルを生成し,切削シミュレータ開発を行った.しかし,2次元ポリゴンを積層させているため,精度と計算時間の両立が難しかった.そこで,3面図のように正面,上面,側面の3つの2次元ポリゴンから3Dモデルを構築する方法の開発を行ったが,3面図をブール演算で生成する方法が難解で,アルゴリズムを確立するのが非常に困難であると判断した.そこで,2023年度は3Dモデルの生成方法は従来の2次元ポリゴンを積層させる方法を使用し,5軸マシニングセンタに対応させた切削シミュレータ開発を行っている. 5軸マシニングセンタでは工具の姿勢が変化するため,z方向に積層されたポリゴンをブール演算を行う際には,楕円形状になる.これまで開発した切削シミュレータでは,ブール演算のアルゴリズムにVattiクリッピングを使用しており,通常Vattiクリッピングは直線で結ばれたポリゴンのみ対応している.そこで,3軸切削シミュレータでは円弧に対応させたVattiクリッピングを開発した.この経験を活かして,Vattiクリッピングを楕円に対応させるために開発を行ってきた.しかし,傾いている楕円同士の交点算出は非常に難解であり,交点を計算するためにさまざまな処理が必要になる.そのため,各処理で計算誤差がのり,実際には交差しているのに,交差していないと検出される場合が多発した. そこで,楕円を円弧で近似させ,計算誤差なくブール演算をできるように,開発を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は5軸マシニングセンタ用切削シミュレータ開発が目標であった.しかし,研究実績の概要で述べた通り,傾いている楕円同士の交点算出は非常に難解であり,交点を計算するためにさまざまな処理が必要になる.そのため,各処理で計算誤差がのり,実際には交差しているのに,交差していないと検出される場合が多発した. このため,円弧による近似を行った.この楕円を円弧による近似のプログラムは完成しており,任意の精度で近似することが可能となった.また,5軸切削シミュレータに対応させるため,任意の角度に姿勢変化した工具のz方向断面形状ポリゴンの生成プログラムも実装が終わっている. 前年度の今後の研究の推進方策に記載していた内容としては,(1)5軸マシニングセンタに対応した工具移動の実装.(2)任意の角度に姿勢変化した工具のz方向断面形状ポリゴン生成の実装.(3)楕円と直線,円,楕円の交点算出の実装.(4)Vattiクリッピングの楕円対応.(5)切削シミュレータのメインプログラムの実装.(6)高速性を担保できる方法の考案,実装.になるが,(2)が完了,(3)と(4)は上記の円弧近似による方法に変更した.(1)(5)はまだ未実装であるが,方法は確立しているので,問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
上記の楕円を円弧で近似したことによって,新たな問題が生じる.それは,近似しているため,精度が悪くなっていることである.また,近似の精度を高くすると,多くの円弧で楕円を表現するため,計算コストも増加してしまう.そこで,近似精度を可変することで上記の問題を解決したい.これまで開発していた切削シミュレータでは,常に非常に高い精度で3Dモデルを表現し,ブール演算を実施していた.そのため,ポリゴンの頂点数の増加が計算コストに影響し,高速性を担保することができなかった.また,Vattiクリッピングはポリゴンの頂点ごとに区切り,計算しているため,頂点数が多いとその区切りが細かくなり,計算時間が伸びてしまう.一方,高い計算精度が必要になる箇所はポリゴン同士の交点算出のときだけである.よって,通常は低い精度で近似された円弧を用いて,3Dモデルを保持し,交点算出を行う際に高い精度で近似し直して,交点算出を行う.この方法を使用すれば,加工による3Dモデルの変化は高い精度で計算しながら,高速にブール演算ができると考えられる. 今後は下記に示す順に開発を行っていく.(1)5軸マシニングセンタに対応した工具移動の実装.(2)切削シミュレータのメインプログラムの実装.(3)一定の精度で円弧に近似された楕円でのシミュレーション.(4)可変精度の実装.(5)積層方向に関する可変精度の実装.(1),(2),(3)の実装に関しては多くの時間がかからないと考えられるが,(4)のデバックに多くの時間がかかると考えられる.(5)は(4)と同じように,積層方向も可変精度にすることによって,一度に多くの積層ポリゴンをブール演算できるようにする.
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