研究課題/領域番号 |
22K14168
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18030:設計工学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古田 幸三 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (20833031)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | トポロジー最適化 / 配向方向最適化 / KL展開 / 意匠 / 時間発展方程式 / フェーズフィールド法 / コンプライアントメカニズム / 構造最適化 / インフィル構造 / 異方性材料最適化 / 複数材料最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では,偏微分方程式に基づく角度,形態および複数材料配置の同時最適設計法の構築を行う.複雑な形状をもつ設計案についても,付加加工技術の向上により製造,生産が可能となってきた.さらには,複数材料の配置も任意に変えられる付加加工技術なども登場しており,従来の設計手法では達成できなかった性能や機能を創出することも可能となっている.また,炭素繊維といった強い異方性を持つ従来に無い製品も登場している.そこで,これらの新技術に対応した,より革新的な機能,性能を創成可能な設計指針の構築を本研究課題では行う.
|
研究実績の概要 |
本研究課題では,Allen Cahn方程式に代表される時間発展偏微分方程式に基づく角度,形態および複数材料配置の同時最適設計法の構築を行う.本年度は,(1) 昨年度に続き,提案手法の根幹をなす製造性を考慮した形態と角度の同時最適設計法の構築 ,(2) 差分進化型計算に基づくトポロジー最適設計法の構築,(3)意匠を考慮したトポロジー最適設計法の構築,(4)仮想的物理場に基づく製造制約を考慮したトポロジー最適設計法の構築に取り組んだ. (1)では,昨年度までに構築した形態と配向方向の同時最適化手法とそのポスト処理として,連続繊維の製造性を考慮した設計手法の構築を行った. (2)では,従来の勾配法に基づくトポロジー最適化法とは全く異なる発見的手法である差分進化型計算に基づく最適設計法の構築に取り組んだ.勾配法に基づく手法のみでは局所最適解が多く存在する非線形性の強い最適化問題では設計案の創出が難しいことが問題となっていた.その解決策として,グローバルな解の探索を効率よく行うことが可能な差分進化型計算に基づくトポロジー最適設計法の構築を行い,提案手法を局所解が多く存在することで知られる負のポアソン比や音響メタサーフェスを対象とした最適化問題に適用し,その有効性を確認した. (3)では,設計変数を等方的な反応拡散方程式で更新するのではなく,設計者の好みの角度に構造が創出しやすくなるような異方性をもった反応拡散方程式を定義し,それに基づき設計変数を更新することで,意匠性を考慮可能な新たな最適設計法の構築を行なった. (4)では,ヒンジ構造をもたないコンプライアントメカニズム創出を目的として,相互平均コンプライアンスに関する設計感度を反応項に,製造性に関する感度は形状感度として移流項として与えた,Allen Cahn方程式を改良した新たな時間発展方程式によるトポロジー最適設計法を構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した通り,本年度は(1) 昨年度に続き,提案手法の根幹をなす製造性を考慮した形態と角度の同時最適設計法の構築 ,(2) 差分進化型計算に基づくトポロジー最適設計法の構築,(3)意匠を考慮したトポロジー最適設計法の構築,(4)仮想的物理場に基づく製造制約を考慮したトポロジー最適設計法の構築に取り組んだ.(1)では,その成果を国際雑誌"Composites Part C: Open Access"に投稿,採択された.(2)では,日本機械学会設計工学・システム部門での口頭発表などを行なった.(3)では,アディティブマニファクチャリングの国際学会であるSIM-AMにて,その成果について口頭発表を行なった.(4)では,最適設計の分野で最も大きな国際学会であるWCSMO15にて,その成果について口頭発表を行なった. 以上のように,それぞれの課題について順調に成果を収め,その発表についても適切に行なっている.一方で,複数材料と異方性の両者を考慮した最適設計法については,現在,定式化,設計感度の導出を行なっており,当初予定より遅れている.以上より,概ね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度には,令和5年度に取り組んだ(2)-(4)の成果に関し,査読付き論文として積極的に発表を行う予定である. また,異方性および複数材料を考慮したトポロジー最適設計法の構築については,速やかに定式化,設計感度の導出を行い,まずは2次問題を通し手法の妥当性検証を行う.具体的には,令和5年度に構築した形態と配向の同時最適設計法と,申請者が所属するグループが開発したマルチマテリアルレベルセット法とを組み合わせることで,等方性材料と異種材料の二種類の材料を考慮可能な定式化を行う.その後,随伴変数法に基づき設計感度の導出,最適化アルゴリズムの構築を行う.以上で構築した手法に対して,ベンチマークとなる剛性最大化問題に本手法を適用し手法の妥当性を検証する.そして最後に,コンプライアントメカニズムなど複数材料,異方性材料を用いることで,従来のトポロジー最適化では得ることが難しかった機能をもった設計案の創出に取り組む予定である. 一方で当初の予定にはなかったが,令和5年度より取り組んでいる差分進化型計算に基づくトポロジー最適設計法を,従来のトポロジー最適設計法では扱えなかった未踏の問題に適用し手法の有効性を検証する予定である.具体的には,現在の提案手法に対して構造界面を陽に表現できるリメッシュの機能を導入し,構築している手法に対して,構造界面における境界条件を考慮可能な手法に拡張する.そして,構造界面においてロビン境界条件を考慮する熱拡散問題に適用し,その妥当性を確認する.そして本研究課題の集大成として,k-εモデルなどで表現される乱流問題へ本提案手法を適用することで,従来法で扱えなかった物理場に対して,設計案の創出が可能となることを示す予定である.
|