研究課題/領域番号 |
22K14178
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松下 真太郎 東京工業大学, 工学院, 助教 (20883036)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 弱圧縮性気液二相流計算 / 界面活性剤 / フォーム功法 / Multi Phase-Field method / 多孔体内混相流 / CCS / EOR / 大規模シミュレーション / 液膜計算 / lamella division / フォーム攻法 / 多孔質内混相流 / 大規模数値シミュレーション / AMR法 / マルチフェーズフィールド法 |
研究開始時の研究の概要 |
地下の岩石多孔質内に包蔵される原油を効率的に回収するためにフォームを注入する手法が研究されつつあるが,液膜を含む流動は数値計算の難易度が非常に高い.独自に開発してきた大規模計算に適する弱圧縮性手法と,界面に高解像度格子を集めるAMR法を導入したコードを用いて高解像度液膜計算を実施する.多数泡沫に対しては一つの泡沫を一つの相として扱うマルチフェーズフィールド法を導入することで高精度なフォーム注入の数値シミュレーションを実現する.界面活性剤の表面張力低下効果及び濃度差マランゴニ効果を導入し,多孔質内におけるフォームの流体力学敵特性を数値シミュレーションによって明らかにする.
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研究実績の概要 |
2023年度は,(1) 吸着・脱離を考慮した界面活性剤の濃度輸送の新しいモデルの構築および検証,(2) 界面をシャープに捉えるPLIC法に基づく運動量保存形混相流ソルバーの開発およびHeight functionによる多孔体実形状中における疑似速度低減効果の検証,を主として実施した. (1)については,濃度保存性を担保することで精度を向上させる目的で濃度輸送方程式に有限体積法を導入する際に生じる数値粘性の問題を解決する全く新しいモデルを構築した.急峻なデルタ関数のプロファイルを有する界面上の濃度輸送方程式は,現実的な10のマイナス10乗などの小さい拡散係数では数値粘性が卓越することによって,濃度輸送計算の精度が著しく低下する.そこで,界面の法線方向に対して平衡状態がデルタ関数形となるように数式を構築することで,既往のモデルでは不可能であった小さい拡散係数での界面上濃度輸送方程式が精度良く解けるようにした.提案手法はJournal of Computational Physicsに提出し,現在査読中である. (2)については,よりシャープな界面表現が可能であるPLIC法を採用した運動量保存形スキームを多孔体計算に適用し,疑似速度を低減させる効果を確認した.多孔体内の流動において疑似速度が発生すると,表面張力が支配的となる流動条件でエネルギー遷移解析や物質輸送計算の精度が悪化し,多孔体特性を正しく得ることが困難となる.PLIC法によるシャープな界面表現とHeight functionによる幾何計算精度向上によって多孔体内混相流現象の定量的な議論が前進したと言える,
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面活性剤の濃度輸送モデルに関して,保存性を担保しながら既存モデルでは不可能であった現実的な小さい拡散係数を持つ界面活性剤の濃度輸送を解くことが可能となった.提案したモデルは革新的であり,ヨーロッパで広く知られている混相流AMRフレームワークであるBasilisk開発者の一人であるPopinetら研究グループも界面上の界面活性剤濃度輸送の研究を盛んに進めているが,上記問題の解決には至っていない.提案モデルは界面活性剤だけでなく,界面上で吸着し,移流・拡散する種々の物質輸送に対しても展開可能であると考えられ,当モデル開発によって本研究テーマは大いに進展したと言える.一方で,当初2023年度に予定していたマルチフェーズフィールド法の実装は,コーディングの段階にあり,2023年度前期までに実装・検証が完了する見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
開発を進めてきた複数GPUで並列実行可能なAMRコードに界面活性剤の濃度輸送モデルを導入し,超高解像度計算によって薄膜の崩壊過程を数値シミュレーションで再現する.スケーリング理論や実験で観測されている液膜崩壊(Daniel,2024)と計算結果を比較し,モデルの精度を検証する. OAPTを導入したマルチフェーズフィールド法と界面活性剤の濃度輸送を連成させた計算手法を新たに開発し,フォーム功法のシミュレーションを実現する.2Dマイクロモデルを用いた実験でえられたフォーム功法の実験データから多孔質形状気泡径分布および物性値を取得し,比較することで計算手法の妥当性を検証する.検証されたコードを用いて,フォームの気泡径分布,粘性・表面張力といった各パラメータが流動に与える影響を調べ,フォーム功法における回収効率増進のメカニズムを明らかにする.
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