研究課題/領域番号 |
22K14197
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
柏木 誠 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70825421)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | フォノン熱輸送 / 熱物性計測 / 熱伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ひずみを与えることによる固体材料中のフォノン熱輸送特性がどのように変化するかを明らかにするとともに、それを利用した新たな熱物性制御技術を確立することを目指す。固体材料に外力を加えると変形するが、これは結晶構造の変形に起因する。ここで固体材料内部での熱の伝播は原子の振動の伝播であり、それらは結晶構造に大きく依存する。したがって、固体材料に外力を加えてひずみを生じさせると、その熱物性が変化すると考えられる。本研究では、ひずみによる熱物性の変化を評価するとともに、ひずみの印加、除去による動的な熱物性制御技術の確率を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、数値シミュレーションを用いて、ひずみを加えた際の固体材料における熱輸送変化、制御の可能性探索をおこなった。特に本年度はシリコン(Si)を対称とした計算を行い、ひずみによるフォノン熱輸送の変化を計算した。その結果、ひずみの印加によってフォノン熱輸送特性が変化することを確認した。より具体的には、例えば引張ひずみを加えた場合には、フォノンの分散関係が変化し、アコースティックフォノンの群速度が低下し、それによりフォノン輸送特性が変化することが確認できた。これらの結果は、ひずみによる熱輸送特性の制御の可能性を示唆していると考えている。 さらに、本年度は、上記の計算で得られたひずみによる熱輸送特性変化を実験的に検証するため、ひずみ‐熱物性同時計測可能な計測手法の確立にも取り組んだ。より具体的には、3ω法を発展させ、3ω法による熱伝導率計測に用いる細線パターンをひずみセンサとしても用いることで、ひずみ‐熱物性同時計測手法の確立を試みた。その結果、ひずみと熱伝導率の同時計測が可能であることは確認できた。また、有限要素計算による熱輸送シミュレーションを用いた検討を行った結果、ひずみの小さな領域における微小熱物性変化を3ω法によって計測可能であることが明らかとなった。一方で、このひずみ‐熱物性同時計測手法を用いた熱物性変化の計測・評価には至っていない。特に、ひずみの小さな領域における微小熱物性変化を評価できておらず、測定系の精度向上が必要であることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究計画よりも若干遅れている。 数値シミュレーションによりひずみによる熱伝導率変化の可能性は示唆された。 一方で、実験的な検証については、当初の計画よりも遅れている。これは、ひずみによる熱物性変化が想定よりも小さく、その変化量を正確に計測・評価するためには現状の計測系では精度が若干不足しているためである。一方で、この精度の問題は測定手法の限界によるものではなく、アナログ回路の改良や計測機器の更新などにより、ひずみによる熱物性変化の計測・評価が可能であると考えられる。 以上を踏まえて、現在までの進捗状況は”やや遅れている。”と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、特に計測系における課題が明らかとなった。これを踏まえ、2年目は計測精度向上のために必要な要素の検討を行い、アナログ回路の改良、計測機器の更新、または細線パターンの改良等を実施し、熱物性計測における計測精度向上を図る。さらに、実際のサンプルにおける熱物性変化の計測・評価を試み、数値シミュレーションにより得られた結果と比較することで、ひずみによる熱物性変化の実証する。さらに、それらの結果から、ひずみによる熱物性制御の可能性を探索する。
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