研究課題/領域番号 |
22K14198
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
寺嶋 真伍 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (10825615)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 熱電発電 / 切り紙 / フレキシブル電子デバイス |
研究開始時の研究の概要 |
従来の熱電発電デバイスは硬く曲げられないため,適用可能な熱源は平面熱源に限られてしまう.そこで本研究では,「熱伝導性の良い硬く伸びない材料でも曲げや伸び縮み変形させることができる」という切り紙独自の性質を熱電発電デバイス構造に適用する.これにより,曲面熱源に設置可能なフレキシブル熱電発電デバイスの実現を目指す.さらに伸縮耐性の高い切り紙構造を提案できた場合,ヒトの皮膚を熱源として発電することも期待できる.様々にある切り紙の中でも,一風変わった切り紙構造を提案し,熱電材料の高性能さを活かすことのできるフレキシブルな熱電発電デバイスを実現させる.
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研究実績の概要 |
8つある研究項目のうち「アレイ化」について取り組んだ.具体的には,これまでと同様の切り紙パターン(巴パターン)をアレイ状に設計し平面状態・曲げ状態・引張状態における出力を計測した.このときの熱電素子のサイズは,前年度の実験結果を踏まえて4×3×1mmとしており,電極と配線の役割を担う銅層の厚みについても前年度の実験結果を踏まえて40 μmとした.本アレイ状の巴型TEGには12対の熱電素子を実装した. はじめに平面状の熱源に設置した場合の性能を計測した.全体の電気抵抗を計測したところ,360±40 mΩであり,1対の場合が30~40 mΩであったことを考慮すると対数倍の抵抗値であることがわかる.このことは,大面積であるアレイ状の巴パターンを立体化させた場合でも,銅層の破断無く立体化させることに成功したことを示している.また,開放端電圧は,高温熱源温度が100℃の場合において142±2 mVであり,出力は最大で12.4 mWとなった.前年度の実験結果から,1対の巴型TEGにおける開放端電圧が約12mVであることがわかっており,今回は,その対数倍の値を得たため,アレイ状に配置したことによる電圧の低下は見られず,性能を保てることが判明した.続いて,曲面熱源(曲率半径37.5 mmの半円柱)に設置したところ,同等の開放端電圧および出力を得た.また,引張状態における性能を計測するため,アレイ状の巴型TEGを引張歪み40%の状態で平面の高温熱源面に設置した.この結果も同様に,開放端電圧と出力は変化することはなかった.このことは,たとえ熱源面が熱配管のような曲面であっても,人の皮膚のような伸縮する熱源面であっても,性能を低下させることなく一定の性能を発揮できることを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本提案研究の巴型熱電発電デバイス(巴型TEG)を「アレイ化」した結果,大面積であるにも関わらず,アレイ状の巴型TEGを立体化させた場合でも電気抵抗が変化しなかったため,どの箇所においても金属層の破断や熱電素子実装部の剥離が無いことが示された.加えて,アレイ状の巴型TEGの開放端電圧および出力については,1対の場合と同じ温度差が熱電素子内に生じていたことが判明した.さらには,アレイ状の巴型TEGの平面状態・曲げ状態・引張状態における出力を計測した結果,曲げ変形や伸縮変形をさせたとしても平面状態の場合と性能が変わらないことから,アレイ状の巴型TEGに対して,今後,変形耐性を高めるような工夫を施さずとも,本提案の巴型TEGは非常に曲げ耐性と伸縮耐性が高いことが実証された.これらの事実は,すでに本提案の巴型熱電発電デバイスが産業化可能なレベルであることを示していると考えたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究項目「出力の安定性評価」「接触電気抵抗の低減」「熱伝導や熱伝達の解明」をベースに進める. 「出力の安定性評価」については,繰り返し曲げ変形と繰り返し伸縮変形を与えた場合に銅層の破断や熱電素子実装部の剥離が生じるのかを電気抵抗を計測することで検証する. 「接触電気抵抗の低減」については,超音波はんだ(現行の実装方法)・バックメタル層の付与・銀ペーストを実装方法として採用し,各実装手法における接触抵抗を計測する.「熱伝導や熱伝達の解明」については,数値シミュレーションと実験の両方から取り組む.数値シミュレーションにより,これまでの実験結果に対する学術的な理由を把握する.具体的には,巴型TEGを平面状態から徐々に立体化するにつれ巴型TEGの出力が向上した理由,および放熱の役割を担う天板の面積を大きく変化させた場合でも出力にあまり差が生じなかった理由を把握する.このためにはまず,空気領域の対流の有無が熱電素子内部に生じる温度差に影響するか否かを明らかとしたい.その一方で,数値シミュレーションの結果が実現象と一致しているか検証する必要があるが,その際にはIRカメラや局所測温プローブを利用して巴型TEGの各部における温度を計測する.
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