研究課題/領域番号 |
22K14201
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 慎平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (80909606)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 格子ボルツマン法 / 熱力学的一貫性 / 自由エネルギー / 化学ポテンシャル / 沸騰 / 混相流 / 相変化 / 平衡 / キャビティ / メゾスケール数値解析法 |
研究開始時の研究の概要 |
沸騰は,気泡の運動や相変化を伴う極めて複雑な現象である。なぜ,あるいはどのように沸騰が発現し,高い熱伝達率を示すのか解明されていない点も未だ多く,その予測は経験式に頼っているのが現状である。本研究では,沸騰過程における気泡核生成から成長,離脱といったマルチスケール現象を一貫して扱うことのできるメゾスケール数値解析法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,沸騰過程における気泡核生成から成長,離脱といったマルチスケール現象を一貫して扱うことのできるメゾスケール数値解析法の確立にある。 2023年度においては,化学ポテンシャルに基づく自由エネルギー格子ボルツマンモデルをベースとして,熱力学的に一貫した格子ボルツマンモデルの開発を進めた。巨視的極限におけるKorteweg応力を回復する定式化を行うとともに,非理想流体の寄与を正確に格子BGK方程式に組み込むため外力項および適切なforcing schemeを検討した。非理想流体を表す状態方程式としては,van der Waals式を用いて数値計算を実施した。その結果,単相流れでよく用いられるHeらの方法やGuoらの方法は,数学的には2次精度の範囲内で同等であるものの,空間分布を有する非理想性に起因する力については,臨界点のごく近傍でしか気液平衡を考慮できなかった。また,数値安定性も低いことがわかった。一方で,擬似ポテンシャル格子ボルツマンモデルで広く用いられるExact Difference Methodや,離散レベルでの力のバランスを解析したwell-balancedな方法では,得られた気液平衡がMaxwellの等面積則とよく一致することを確認した。また,得られた化学ポテンシャルの空間分布について比較したところ,well-balancedな離散化が熱力学的一貫性の観点で有効であることを明らかにした。 上述のような熱力学的に一貫した格子ボルツマンモデルを用いて,沸騰を模した系を設定し,沸騰の計算が可能であるかを調べた。2次元のチャネル下部に液相を,上部に気相を初期条件として与え,底部の一部を過熱状態とする境界条件を課した。その結果,底部において蒸気泡が発生し成長する様子を観察できた。熱力学的に一貫した格子ボルツマンモデルにて,沸騰を表現できる見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沸騰のシミュレーションを熱力学的に一貫して行うための,非理想流体および非理想性に起因する力を格子ボルツマンモデルに組み込むための定式化を完了させた。エネルギー方程式についても,非理想流体を導入するための導出を行い,格子ボルツマン方程式を用いて解くための定式化を行うとともに,簡易な系での計算にて沸騰を表現できることを確認できた。以上より,本研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
非理想流体によるモデリングを見通しよく行うためにvan der Waals状態方程式を用いて計算を実施してきたが,実在気体の状態方程式を計算に組み込む。また,化学ポテンシャルに基づき境界条件を与え,沸騰における重要なファクターである濡れ性の影響を評価可能とすることを目標とする。
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