研究課題/領域番号 |
22K14225
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
小村 啓 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (00881096)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 運動錯覚 / 経皮的振動刺激 / ヘッドマウントディスプレイ / EMG / 運動錯覚現象 / 腱振動刺激 / リハビリテーション / 伝達関数 / 筋紡錘 / 多感覚統合 / 振動刺激 / 身体計測 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の研究で,運動錯覚(腱・筋肉に振動を与えると深部感覚(身体が動いた感覚)が生起する錯覚現象)において,脳回路の形成に効果があることが脳機能計測で示され,リハビリ分野への応用が期待され始めている.我々は過去の研究で,リハビリで行う巧緻運動の感覚を運動錯覚で生起させる技術の研究開発を進めてきたが,外部刺激によって腱・筋の剛性が容易に変化してしまい,安定した錯覚を生起することが難しいという問題があった.そこで本研究では,人の腱・筋の物理特性を計測し,振動刺激だけでなく筋・腱の状態(緊張や弛緩)も同時に制御に組み込むことで,巧緻運動のような繊細な運動感覚を錯覚現象によって実現することを試みる.
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研究実績の概要 |
本年度は,経皮的振動刺激で生起する運動錯覚を阻害せずに視覚刺激を重畳する方法の検討,及び運動錯覚の個人差が生起する原因の検討を行った.本年度の実験でも昨年度と同様に刺激対象としたのは右手首の橈側手根屈筋腱であり,この腱に振動刺激を与えると被験者は手首が背屈するような感覚を知覚する.これまでの研究では,この錯覚を阻害せずに視覚刺激を与えることが難しいという課題が存在した.まず一つ目のアプローチとして,運動錯覚が生起している右腕手首の上に液晶ディスプレイを設置し,そのディスプレイで被験者の手首が背屈する映像を運動錯覚に重ねる方法を提案した.しかし,この手法ではあらかじめ準備した手首が背屈する映像を重ねることしかできず,その映像提示方法では運動錯覚を阻害してしまうことが分かった.そこで,2つ目のアプローチとしてヘッドマウントディスプレイを通じてリアルタイムで被験者が感じている運動錯覚をフィードバックする方法を提案した.提案手法は,まず被験者が知覚した右首の錯覚による背屈運動を左手首で再現してもらい,その動きをVive Proのコントローラを通じてトラッキングし,ヘッドマウントディスプレイを通じて右手首の動きとして被験者にフィードバックを行った.その結果,全ての被験者が,閉眼状態での運動錯覚と同程度の錯覚を開眼状態でも経験することができた.一方で,この実験を通じて,被験者間で同じ振動刺激を与えても生起する錯覚量には大きな個人差が存在することも分かってきた.そこで運動錯覚の個人差がどのような要因で生まれるのかの基礎的な検討も行った.まず,振動刺激を与える筋肉の緊張状態が錯覚を阻害してるのではないかと考え,錯覚の大小と筋肉の緊張状態をEMGで計測してみた.しかし,運動錯覚の個人差と筋緊張と間に関連を確認することはできなかった.今後は,この個人差についてさらに調査を行っていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた,運動錯覚のモデル化,及び運動錯覚を阻害しない視覚刺激提示法の開発は実現することができた.現在は,上述の開発した装置はさらに発展させ,個人ごとに運動錯覚を精密に制御する方法を検討している.
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今後の研究の推進方策 |
被験者間や被験者内において錯覚量が大きくばらつく問題が存在する.今後はこの要因を明らかにするために,超音波エコーを用いた身体形状の計測や,振動刺激を腱に効率的に伝搬する機構の開発などを進めていく予定である.
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