研究課題/領域番号 |
22K14239
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福永 崇平 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (20914138)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | SiCパワーデバイス / パワーモジュール / 過渡熱抵抗 / 熱設計 / 逆畳み込み積分 |
研究開始時の研究の概要 |
適用範囲のさらなる拡大が見込まれるパワエレ機器は、小型軽量化が期待されている。しかし小型化により発熱密度が増大するため、パワエレ機器の主たる発熱部品であるパワーモジュールの放熱設計が重要になる。本研究の目的は、パワエレの革新を担う次世代SiCパワーモジュールの熱設計評価技術の開発である。具体的には、発熱源のモデル化に必要な数マイクロ秒程度の現象を測定できる新しい測定装置の開発、および測定結果から放熱特性を高精度にモデル化する信号処理技術を提案する。新構造や新材料の適用による、実使用環境における次世代パワーモジュールの放熱メカニズムを明らかにし、その特性を高精度に評価および設計に反映可能にする。
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研究実績の概要 |
本研究は, パワエレの革新を担う次世代SiCパワーモジュールの熱設計評価技術の開発を目的としている。ハードウェアへのアプローチとして, 発熱源であるパワーデバイスをモデル化するため, 数マイクロ秒以内の現象を評価できる新しい測定装置を開発する。またソフトウェアのアプローチとして, 測定結果から放熱特性を高精度にモデル化する信号処理技術を提案する。 当該年度は過渡熱抵抗測定で用いる測定システムのうち, 被測定対象を自己発熱させるために印加する加熱用大電流を高速遮断可能な電流遮断回路の性能向上に取り組んだ。使用するPCB基板の構成を含めた回路パターン設計や, 回路に使用するパワー半導体デバイスを駆動するためのゲート駆動回路の実装方法を検討し, 回路基板の寄生インダクタンスを最小化した。加えて, 回路に適用するパワー半導体デバイスを選定し, 高速スイッチング性能を活かした大電流の高速遮断を実現した。開発した電流遮断回路はユニット構成としているため, 並列数を増やすことによる大電流化を可能とし, 大電流用途のパワーモジュールの過渡熱抵抗測定へ適用可能である。 また開発する測定システムの適用先として, 種々の絶縁放熱セラミック板や界面熱伝導材料を適用した場合の, SiCパワーモジュールの放熱性能を過渡熱抵抗に基づき評価した。過渡熱抵抗により分離したセラミック板の熱抵抗について, 材料の熱伝導率や幾何的な厚みに対して, 物理式から予想される熱抵抗に一致することを明らかにした。また界面熱伝導材料では, 使用する材料の熱伝導率や粘度が放熱性能に与える影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発する測定システムのうち, 当該年度に開発した電流遮断回路は, 被測定対象を自己発熱させる大電流を高速に切り替え, マイクロ秒オーダー以下で遮断する必要がある。厚銅PCB基板を採用して大電流通流時のジュール損失を低減するとともに, ゲート駆動回路を立体配置して高密度実装することで, 回路基板の寄生インダクタンスを最小にした。また適用するパワー半導体デバイスを選定し, 高速スイッチング性能を活かした大電流の高速遮断を実現した。これらの設計から, 電流遮断時間を50 A通流時に2.5 us以下としており, 当初の目的を達成できている。 また開発する測定システムを適用する次世代SiCパワーモジュールについて, 高放熱性能を得るために適用する種々の絶縁放熱セラミック板や界面熱伝導材料を適用した場合の, SiCパワーモジュールの放熱性能を過渡熱抵抗に基づき評価した。高圧用途のパワーモジュールへの適用に際して必要な絶縁放熱用セラミック板では, その熱抵抗がその厚みに比例し, 熱伝導率に反比例することを明らかにした。これは熱伝導方程式から導出される熱抵抗の理論式と一致しており, セラミック板において放熱面積が一定となっていることを示している。またパワーモジュールをヒートシンクに取り付ける際に生じる接触熱抵抗を低減するために用いる界面熱伝導材料について検討を行った。通常用いられるSiグリースなどの流動性材料に加えて, 小型電子機器の熱拡散に用いられていたグラファイトシートを適用した場合を比較したところ, 流動性材料が優れた放熱性能を示した。これは大型のパワーモジュールでは裏面のヒートスプレッダの反りなどにより空隙を発生して接触熱抵抗が大きくなってしまうところ, 流動性材料はこの空隙に入り込み, 接触面積を増やすことができるためである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き, マイクロ秒オーダーの現象を測定可能な過渡熱抵抗測定装置の開発を進める。開発した電流遮断回路について, 面実装パワーデバイスの採用によるさらなる低寄生インダクタンス化を目指す。また当該年度の取り組みにおいて, 開発する測定システムのうち, データを取得するために採用した高速高分解能ADコンバータに重畳する信号ノイズの低減が課題であることが明らかとなった。アナログおよびデジタルフィルタ設計によるノイズ低減へ向けたアプローチを進めて行く。加えて, 得られたデータから過渡熱回路モデルのパラメータを同定する過程において, ベイズ統計学に基づく重畳ノイズ成分の推定から, 所望の成分のみを抽出するノイズ除去フィルタを設計する。ハードウェアとソフトウェアの統合設計による次世代SiCパワーモジュールの高放熱性能を評価可能な熱設計評価技術の開発を進める。 また開発する測定システムの適用先である, SiCパワーモジュールに適用する構造や材料の検討を並行して進めていく。回路パターン構造による放熱特性の設計や, 回路パターン銅と絶縁放熱セラミックの接合界面が与える影響を定量的に評価する。得られた結果をもとに, 次世代SiCパワーモジュールの評価に向けて, 開発する測定システムに必要な性能を明らかにし, フィードバックを加える。 得られた研究成果の内容を有識者との議論を通してより一層高めるため, 国内研究会・国際学会発表を積極的に行う。また得られた結果をとりまとめ, 学術論文の執筆を計画している。
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