研究課題/領域番号 |
22K14246
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
平瀬 祐子 東洋大学, 理工学部, 准教授 (50843778)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | データ駆動 / インピーダンス / マイクログリッド / 共振 / 安定性 / 摂動 / インバータ / モデル / パワエレ / 分散電源 / 電力系統 / データ駆動型 / モード解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,非定常性・非線形性が強い電力系統解析のための,様々なデータ駆動型ベースのモード分解手法の研究を行う。具体的には,クープマンモード分解(KMD),ヒルベルト・ハン変換(HHT)等の新しい手法を従来手法と組み合わせ,抽出モードの混在率低下や,解析・制御に要する時間の短縮などを目指す。従来手法および各種新手法(KMD,HHT等)の精度について精査し,双方の手法の弱点および優位点を明確にし,それらを好適に組み合わせた新しいモード解析手法を確立する。数値解析シミュレーション試験結果と実証試験の双方から計測した観測量に各種手法を適用し,理論の妥当性と応用可能性を評価する。
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研究実績の概要 |
再生可能エネルギー由来の電源(再エネ電源)は、電力系統には系統連系インバータと呼ばれるパワーエレクトロニクス機器を介して連系される。連系インバータは従来の同期発電機の制御とは異なる非線形かつ高次の制御を持つため、再エネ電源の普及は即ち、再エネ電源同士や再エネ電源と系統との間で幅広い周波数帯域の共振現象の可能性を高める。このため、連系インバータが原因となる共振現象の可能性を解析するために、従来の数式モデルベースの手法に代わるデータ駆動型の新しい解析手法を研究してきた。 これまでの2年間にわたり、データ駆動型解析として2種類の手法を検討してきた。1つ目はEMD(Empirical Mode Decomposition)と呼ばれるモード解析手法であり、2つ目はインピーダンスベース解析手法である。2023年度には、これらの中でも他国で先行して運用されているインピーダンス解析を日本の産業界に普及させるため、解析に必要な摂動電源や計測機器の要求仕様を明らかにするための実験室規模の実証マイクログリッド(MG)を構築し、実証試験の基盤を完成させた。 本手法では、幅広い周波数帯域の微小摂動を基本信号に重畳させるために、一般的にリニアアンプが摂動電源として使用される。しかし、リニアアンプの大型かつ高価な性質が普及を阻んでいるため、2023年度には、より簡便かつ小型の装置で摂動信号を生成する手法について研究した。 数値シミュレーション(MATLAB/Simulink)を使用し、考案した摂動発生法によって得られる系統の安定性が従来の方法と一致したことから、インピーダンスを計測する原理を変更せずに安定性を評価できることが証明された。また、摂動発生用のプロトタイプ装置の開発を行い、所望の摂動信号が生成されることを確認した。最終年度には、実験室MGに接続してインピーダンスを実測する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年2月から1か月間、ノルウェー国立研究所SINTEFのマイクログリッド(MG)設備を利用して、従来の手法を用いたインピーダンス解析の実証試験を行った。SINTEFのMG環境は高価な設備だけでなく、監視・制御用の通信環境も整っていたため、短期間で必要なデータの計測・解析が可能であった。しかし、高価で大掛かりな装置を必要とすることが本手法の普及を妨げると考え、これに代わる簡易手法を研究することにした。 まず従来の手法を用いてインピーダンス解析が行えるMGを準備した。しかし、これに必要なリニアアンプの納品に半年以上かかり、実試験の開始が下半期まで遅れた。同時に、数値シミュレーションを利用した新手法の考案も行った。固定座標上の摂動信号は正逆両相の正弦波を重ね合わせて生成するが、本研究においては、正逆両相でのパルス波の重ね合わせ信号を発生させることとした。しかし現有インバータ用CPUプログラムは一般的な電力用正弦波用の関数を使用するため、複雑な摂動パルス信号の生成ができなかった。そこでFPGA回路用記述言語を作成することになったが、未経験のため想定以上の時間を要した。 最終的に、新手法の従来手法との比較や妥当性確認が完了したのは2024年3月末日であり、計測したインピーダンスも商用系統と抵抗負荷によって構成される最も基本的な構成に留まった。しかし、全体としては革新的な新手法の発明に至り、スケジュールにおいても順調に進展したか、または当初の計画以上に進展したと言える。2023年度の成果の一部は国際学会で発表を行っているが、全成果については、速やかな特許出願のあとに、学会や論文で公知のものとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
インピーダンスベース解析では電流または電圧の基本波信号に幅広い周波数帯域の微小摂動信号を重畳させ、計測した電圧と電流からインピーダンスを算出する。この摂動信号は一般的に固定座標上の正相と逆相それぞれの正弦波を重ね合わせた形状をしており、その発生にはリニアアンプが使われてきた。しかしリニアアンプの大型かつ高価な性質が普及を阻んでいるため、2023年度には、現有インバータを用いたパルス状摂動信号発生装置を製作し、シミュレーションによってその新手法および新装置の実用妥当性について確認した。2024年度は、そのパルス状摂動信号発生装置を実験室MGに接続して、計測したインピーダンスから装置の実用性を確認する。商用系統+抵抗負荷のような基本系統構成に留まらず、商用系統+インバータ分散電源、インバータ分散電源+家電負荷のような様々な構成を想定し、不安定極のインピーダンスベースによる特定を目指す。また、企業(川崎重工業)の協力を得て分散電源を実験室MGレベルから実配電系統に接続される容量レベル(数十KVA程度)や電圧レベル(400Vから6600V程度)にレベルアップし、これを公的機関(福島産総研FREA)の協力を得たハードウェアインザループ(HIL)環境に接続し、より現実的なインピーダンスベース解析の環境を構築する。インピーダンスを計測して安定性を解析できるまでのプロセスにおいて、ソースコードの簡便性や装置の小型化を評価し、国内外の学会や学術雑誌などでの発表を目指す。
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