研究課題/領域番号 |
22K14258
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武政 淳二 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (20902141)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | プログラマブルスイッチ / キャッシュ / ステートフル転送 / トラフィック生成器 / 5Gコア / プログラマブルデータプレーン / 5G / フォワーディング / ステートフル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、次世代の5Gコア網で数千万規模の端末の収容とTbpsのパケット転送速度を両立可能なUser Plane Function (UPF)の構築法を提案する。UPFではインターネットからの下りパケットを端末の接続する基地局へ適切に転送する必要があり、端末毎の接続状態の管理が鍵となる。現状の汎用計算機実装では200Gbps程度に制限され、次世代基盤であるプログラマブルスイッチではメモリが小さく1万程度の端末しか収容できない。これに対し、両ハードウェアを組み合わせたクラスタ上にUPFを構築し、双方の性能要件の両立を目指す。
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研究実績の概要 |
前年度設計した、プログラマブルスイッチと汎用計算機を組み合わせた、キャッシュシステムの性能を理論・実験の両側面より評価した。キャッシュは入力トラフィックに対しキャッシュ内容を変化させながら処理するため、1)様々なトラフィックパターンに対する性能維持、2)入力トラフィックの経時変化に対する性能の安定性を評価する必要がある。 1)に関し、コンテンツの要求頻度分布と入力トラフィック量を入力とし、コンテンツ要求のキャッシュヒット率、アドミッションによるコンテンツのキャッシュ挿入率、遅延応答によるヒットした要求に対する応答の集約率を、マルコフ連鎖とM/G/1/0キューイングモデルをベースにモデル化した。Zipf分布等のインターネットトラフィックを想定した入力に対し、理論的な限界に近いフォワーディング速度を得られることを確認した。 2)に関し、Zipf分布の要求頻度分布を仮定し一定時間毎の人気コンテンツの変化を模擬しながら、テラビット/秒のトラフィックを生成可能なトラフィックジェネレータを、プログラマブルスイッチを用いて開発した。1)のモデルは、新しい人気コンテンツが登場しキャッシュされるまで一時的にミスを頻発するといった、人気度の経時変化に対する過渡期の性能安定性を評価できなかった。本キャッシュシステム実装の性能を、開発したトラフィックジェネレータにより測定し、過渡期も含め安定して1Tbps近くのスループットを得られることを確認した。 本研究成果について、2023年度電子情報通信学会ネットワークシステム研究会より以下の通り受賞した。1)の成果(2023年9月発表)に対し若手研究奨励賞を受賞し、前年度発表した本キャッシュシステムの設計(2023年3月発表)に対しネットワークシステム研究賞を受賞した。 また、これまでのキャッシュシステムの設計・解析・実装の成果をまとめ、論文誌へ投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、最終年度の目標の一つであった、本システムを評価するためのトラフィックジェネレータの構築を本年度に前倒しして実施し、完了した。実際に、テラビット/秒の速度で、Zipf分布の要求頻度分布、ならびに、人気コンテンツの経時変化を模擬する機構を実現したことで、実機上での実装に対し、現実に近いトラフィック下での性能安定性を評価することができた。 次に、当初の予定には盛り込んでいなかったキャッシュの解析モデルを開発している。(実施概要の1)参照)この解析モデルにより、本キャッシュシステムの性能を、様々なトラフィックパターンに対し多角的に評価でき、その性能特性を明らかにできた。これにより、UPFを実装するプラットフォームの性能評価を、当初の予定以上に完成度の高い形で完了できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の予定以上に進捗しており、UPFを実装するプラットフォームの設計と性能評価が一通り完了している。このため、以下の通り、2024年度は5Gコアへの適用を進める。 第一に、UPFのパケット転送機能への適用を検討する。Packet Detection Rule (PDR)に基づくパケット分類とForwarding Action Rule (FAR)に基づく転送が主な対象であるが、これに加え、バッファリングやQoS制御等の、パケット転送を超えた機能の設計も合わせて検討予定である。 第二に、トラフィックジェネレータをモバイル向けに拡張する。2023年度に開発したトラフィックジェネレータは、当初の研究計画にあった、キャッシュシステムに基づくルール管理とパケット転送の評価には十分である。一方、端末の移動やアイドル状態への移行といった、より現実的なモバイル環境を想定し、ルールの更新やバッファリングの起きる契機をトラフィックジェネレータ上で模擬し、モバイル環境に適した性能評価ツールへと拡張する。
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