研究課題/領域番号 |
22K14272
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
李 ひよん 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30870787)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 光ファイバセンサ / 分布計測 / ブリルアン散乱 / レイリー散乱 / 分布計測システム |
研究開始時の研究の概要 |
社会インフラの健全性を診断する手法として、分布型光ファイバセンサが注目されている。これまでに数多くの手法が提案されてきたが、我々は、光ファイバ中のブリルアン散乱スペクトルの形状に基づいて動作する「傾斜利用ブリルアン光相関領域反射計」の研究開発を推進している。本システムでは、従来は困難であった速い測定速度と高い空間分解能の両立および極めて短いホットスポットの検出が可能である。しかし、安定性や歪ダイナミックレンジの向上、測定速度と空間分解能のトレードオフなどの課題が残されている。本研究では、独自の様々な方策により上記の課題を解決し、機能を進化させるとともに、本システムの実用化を目指す。
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研究実績の概要 |
ブリルアン利得スペクトル(BGS)の傾斜上に位置する特定周波数のパワーの変化量がBGSの変化量と1対1対応する性質を用いた「傾斜利用ブリルアン光相関領域反射計(傾斜利用BOCDR)」の様々な性能向上に向けて研究を推進している。本年度は、(1) 参照光路内の遅延ファイバの最適な長さの解明、および (2) レイリーノイズスペクトル幅に基づく変調振幅推定法の提案を中心に研究を行った。以下、それぞれの成果について詳しく記述する。 (1) 光波コヒーレンス関数の合成法に基づいて動作する傾斜利用BOCDRでは、測定位置となる相関ピークの次数を制御するため、参照光路に比較的長距離の遅延ファイバを挿入する。遅延ファイバは短すぎても長すぎても性能が劣化することが知られているが、その最適な長さについてはこれまで検討されていなかった。そこで、全長測定の場合について、遅延ファイバが長くなると測定ファイバに起因するピークより遅延ファイバに起因するピークのほうが大きくなることを実験的に示した。行った実験条件では、15 km程度までの遅延ファイバであれば、FUTに起因するBGS観測に悪影響を及ぼさないといえた。 (2) BOCDRの空間分解能を決定するには、光の変調振幅を測定する必要がある。しかし、従来の変調振幅の測定法では、利便性や精度に問題があった。そこで、レイリー散乱によって生じるノイズのスペクトル幅を利用し、測定ファイバ長に制限されることなく、変調振幅を測定する新たな手法を提案した。従来の手法とは異なり、電気スペクトラムアナライザを用いて測定するために高い周波数分解能が得られるほか、実験系の変更が不要なので利便性が高いのが特徴である。また、任意の長さの測定ファイバに適用可能であることを実験的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)における遅延ファイバの最適な長さを解明するために遅延ファイバ長を変化させたときのブリルアン利得スペクトル(BGS)を実験的に評価した。また、偏波状態に対するBGSの依存性を調査することで、遅延ファイバが長いときに観測される意図しないブリルアン散乱成分が、遅延ファイバ中の「ブリルアン後方散乱のレイリー後方散乱」あるいは「レイリー後方散乱のブリルアン後方散乱」によって生じることを示した。また、BOCDRの空間分解能を決定するために必要となる、変調振幅の新たな推定手法を提案した。提案した推定手法では、レイリー散乱に起因するノイズスペクトルのスペクトル幅を利用することで、変調振幅の推定を行う。利便性と測定精度の向上を実現したのに加え、測定ファイバ長に制限されることなく、変調振幅の測定を可能にした。そのため、今後、BOCDRにおける空間分解能を正確に評価する手法として、普遍的な活用が期待される。他にも、相関領域LiDARにおいて、ゴーストピークが発生する原因を実験によって明らかにした。これらの成果は、査読付学術論文への掲載や国内外学会での発表に繋がっており、当初の計画通りの順調な進捗が得られていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1) レイリーノイズスペクトルの発生要因の調査、(2) レイリー散乱に基づく測定位置算出法の提案を考えている。以下、詳細について記述する。 (1) 本年度は、光スペクトラムアナライザやヘテロダイン検波系を用いた従来手法に比べ、BOCDRにおけるレイリーノイズスペクトルを利用することで、測定精度と利便性の向上を実現し、かつ任意の測定ファイバ長で適用可能となる変調振幅推定法を提案した。提案した推定手法では、変調周波数に依存して変動する2つのレイリーノイズスペクトル成分の内、高周波成分側のスペクトルを利用する。しかし、これらの2成分の他に第のレイリーノイズ成分が存在し、変調振幅の推定に利用すべき成分が不明となる場合があった。そこで、この第3のノイズ成分の発生要因を調査し、この成分が存在する場合においても正確に変調振幅を推定する手法を確立するための方針を示す必要がある。(2) 測定ファイバ上の測定位置となる相関ピークの位置は、変調周波数の値によって決定されるため、BOCDRの分布測定結果の出力には変調周波数の値を測定ファイバの位置に対応させる必要がある。よって、位置精度の高い分布測定を行うためには、測定ファイバ上の相関ピークの位置と変調周波数を正確に対応付ける必要がある。しかし、これまでに測定ファイバ上の相関ピークの位置を算出する具体的な手法は提案されていない。そこで、レイリー散乱に起因するノイズスペクトルが変調周波数の値によって変動することを利用し、測定ファイバ上における相関ピークの位置を算出する手法を模索する。
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