研究課題/領域番号 |
22K14278
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山田 恭史 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (80802561)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | エコーロケーション / コウモリ / バイオミメティクス / 生物ソナー / シンプルデザインセンシング / 自律飛行ドローン / 構成論的研究手法 / サーモホン / 空間学習ナビゲーション / SLAM |
研究開始時の研究の概要 |
コウモリは, 口または鼻孔から超音波パルスを放射し,周囲からの反響音(エコー)を両耳で聴取することで3次元空間を把握し(エコーロケーション),リアルタイムな飛行を実現させている. 本研究では,3次元空間知覚から効率的なナビゲーションの意思決定に至るまでをシンプルな超音波センシング機構で簡潔させるコウモリのナビゲーション戦略について,ドローンへの模倣応用を実践する.特に,コウモリに最適化された戦略から“デフォルメ”し,工学装置へと最適化させることで,実用的な模倣応用技術としての提案を実践していく.
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研究実績の概要 |
本年度の研究遂行により,以下の研究成果を上げることができた. ①コウモリのエコーロケーションを題材とした検証から,3次元定位に有効なエコー聴取時の耳介動態条件の理論化ができた.具体的には,網羅的な耳介動態パターンとそれに応じた聴取エコーパターンの数値シミュレーションを行い,4つの条件を満たす耳介動態パターンであれば,その効能を発揮することが分かった.本成果について責任著者として論文掲載させることができた(Hiraga et. al.,2022). ②コウモリ同様の非線形周波数下降パルスを用いたセンシングが,ドローンの飛行ノイズに対して耐性を持つことを確認できた.特に現在では,1送信・2受信器の超音波センサを搭載したドローンによる自律障害物回避ナビゲーションの飛行テストを実施中である.本検証によって,コウモリ模倣の空中超音波ナビゲーションシステムの未来が切り開かれる.現在は計測と並行して,論文執筆中である. ③また共同研究の成果として,コウモリの障害物環境下における空間学習音響ナビゲーションの計測データから,聴取エコーの可視化シミュレーションツールを構築することができた.これらの成果についても共著者として論文掲載された(Teshima et. al.,2022).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①当初の研究計画を支える基盤技術,すなわちコウモリ模倣型の自律飛行ドローンを障害物環境下でテスト飛行させることができたことは,非常に大事な成果である.特に現在はその性能の定量評価をほとんど完了し,論文執筆中である. ②また,耳介動態理論に関する論文も本年度に公表され,科学的知見としても有用であることを世間に公表できたことは,大きな成果である.現在では,同様の数理分析フレームワークを転用し,耳介動態を伴わないコウモリを題材にした数理分析も開始している.非耳介運動型のコウモリの空間認知理論が構築できれば,より簡便な工学実装システムへの応用が期待できる.この分析自体は当初の研究計画調書にはなかったが,実際に数値実験をして初めて見出した新展開であること,また,当初の目標をより簡便なシステムで実装するための革新的な検証であるため,非常に重要な分析だと判断した. ③また,エコー信号からの(壁面・円柱)オブジェクトの認知に関わる検証については,現在,音響シミュレータの構築と能動的推論をベースにした数理検証システムを構築中である.本分析ツールの構築は研究遂行の核となるタスクであり,現在のところ大きな問題は起きていない.このため,順調であると判断する. また成果物として,責任共著者としての論文1報,共著者としての論文1報を掲載するに至ったことからも,順調な進展を迎えていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
執筆中の自律飛行ドローンの論文掲載を行うとともに,コウモリ同様のアクティブセンシング機構の実装・評価を行う.特に飛行実験を経て,自身の移動に伴うドップラーシフトが,センシング性能に重要な影響を及ぼすことに気づくことができた.そもそも主知覚センサとしてシンプルな超音波センシングシステムを採用し,空中ナビゲーションを実践すること自体が世界初の試みであるため,その重要性を認識している研究者はほとんど皆無である.次年度はドップラーシフト耐性という観点からコウモリのアクティブセンシング術について数理分析を行い,その機能的優位性を明らかにする計画である. また,非耳介動態型のコウモリの3次元空間認知システム,および,形状認知システムの分析については,引き続き数値シミュレーションによる分析を試みる.
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