研究課題/領域番号 |
22K14284
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
佐々木 貴広 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (00835168)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 宇宙デブリ除去 / 宇宙機システム / アストロダイナミクス / 制御工学 / 姿勢制御 / 軌道制御 / 平衡姿勢 / 電気推進 / 人工衛星 / デブリ除去 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙ゴミの増加抑制に有効である大型デブリ除去は、その持続的実施のために低コスト化が必要であり、小型衛星で実現できることが重要である。近年の電気推進の小型化や、空力トルクを打ち消す平衡姿勢といった新しい研究成果によって、小型衛星による大型デブリ除去が可能な世界が開かれつつある。 本研究では、大型デブリと結合後に劇的に変化する質量特性を推定し、小型電気推進や平衡姿勢を維持することで大気抵抗を積極的に利用し、不確かなモデル化誤差や軌道上外乱に対してロバストな誘導・制御則の設計手法を確立する。
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研究実績の概要 |
宇宙ゴミ(デブリ)の増加抑制に有効である大型デブリ除去は、その持続的実施のために低コスト化が必要であり、それには小型衛星で実現できることが重要である。しかし、除去対象の大型デブリは長期間宇宙に残存する高い軌道高度に存在するため、その高度を大きく落とし地球へ再突入廃棄させるエネルギー量は大きく、高い高度では大気が薄いがゆえに大気抵抗を利用したDrag Sail も利用できない。従って、小型衛星による実現には技術的に大きなハードルが存在していた。 しかし、近年の電気推進の小型化や、空力トルクを打ち消す平衡姿勢といった新しい研究成果によって、小型衛星による大型デブリ除去が可能な世界が開かれつつある。そこで本研究では、大型デブリと結合後に劇的に変化する質量特性を推定し、小型電気推進や平衡姿勢を維持することで大気抵抗を積極的に利用し、不確かなモデル化誤差や軌道上外乱に対してロバストな誘導・制御則の設計手法を確立することを目的とする。 上記の目的を達成するため、本年度は当初予定していた研究計画通り、1) 電気推進を用いた適応誘導・制御に関する研究、2) 空力データベースを用いたトルク平衡姿勢の安定性解析、の2つの課題に取り組んだ。これら2つの研究テーマから得られた成果により、高度400km以上の高高度における電気推進を用いたモデル誤差を考慮した軌道降下および、高度400km以下の低高度における大気抵抗を活用した軌道降下について、それぞれ小型衛星で実現可能な見込みを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初予定していた研究計画通り、1) 電気推進を用いた適応誘導・制御に関する研究、2) 空力データベースを用いたトルク平衡姿勢の安定性解析、の2つの課題に取り組んだ。 1) 電気推進を用いた適応誘導・制御に関する研究:大型デブリ捕獲後、大気密度が小さい低高度(約400km)までは電気推進を用いた軌道降下が消費燃料の観点からも有効である。本研究では、大型デブリと結合し劇的に変化する質量特性を推定しつつ、電気推進のジンバル駆動およびその他の姿勢制御装置 (リアクションホイール、磁気トルカ等)を組み合わせた複数かつ異種のアクチュエータにより効率よく制御する、適応制御則・駆動則を提案し、従来法と比較して制御応答が改善されることを示し、国際学会での発表および学術誌にアクセプトされた。 2) 空力データベースを用いたトルク平衡姿勢の安定性解析:小型衛星で大型デブリを落下させる際、大気抵抗による減速が最大(投影面積が最大)となる姿勢に制御することで落下速度を最大化することができるが、そのような姿勢では大きな外乱トルクが働き、小型衛星に搭載可能な制御機器で姿勢制御および角運動量管理を実現させることが難しい。そこで、小型衛星で制御可能な範囲で大気抵抗減速を有効に活用できる姿勢として、低高度で支配的な重力傾斜トルクと空力トルクの釣り合い姿勢であるトルク平衡姿勢が注目されている。本研究では、分子流解析によって得られた厳密な空力モデルを用いて、デブリ除去特有の高度変化を伴うトルク平衡姿勢の導出および各軌道高度での平衡姿勢の安定性を解明した。本研究の成果は、次年度の国際学会での発表がアクセプトされている。 上記より、当初予定していた研究課題に対して、一部先行して顕著な成果を挙げ学会・学術誌へのアウトプットもできていることから、進捗状況として期待以上であると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果は、高高度 (高度400km以上)の大気抵抗の小さい領域で有効である電気推進を活用した大型デブリの軌道降下および、低高度 (高度400km以下)の大気抵抗が大きい領域で有効である大気抵抗を積極的に活用したトルク平衡姿勢を維持した軌道降下についてであった。 来年度は、今年度実施した成果を応用し、2つの軌道降下手法 (電気推進を用いた手法・大気抵抗を活用した手法)を切り替える最適な軌道高度について明らかにすることを目的とする。最適化問題における制約条件としては、小型衛星であることを加味し、アクチュエータ (リアクションホイール等の姿勢制御装置)のサイズおよび、電気推進の推薬、そしてデブリ除去にかかる期間 (運用コスト)の3点を考えている。 また来年度は、落下地点の高精度化を可能とする再突入誘導則および運用計画に関する研究について新たに着手する。自由落下により大気抵抗減速時間を稼ぎ、目標の落下地点に最小のΔV (消費推薬量)で落下させるシナリオであるMinimum ΔVリエントリが提案されている。しかし、この先行研究では、大気密度や噴射誤差を考慮しておらず、ΔV量を小さくすると、再突入角も小さくなり、結果的に軌道制御誤差等の影響により落下分散が広がってしまう。そこで本研究では、小型衛星システムで実現可能な消費ΔV量の中で落下分散を小さくするような再突入角の計算手法を確立し、安全に目標地点へ落下させるロバストな落下軌道・運用計画を提案する。
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