研究課題/領域番号 |
22K14290
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
名和 憲嗣 三重大学, 工学研究科, 助教 (40872990)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 表面・界面物性 / 磁性 / スピントロニクス / 機械学習 / 第一原理計算 / 表面・界面磁性 |
研究開始時の研究の概要 |
機械学習と第一原理計算を組み合わせた材料設計手法を開発し、高(多)機能化された人工多層膜系や磁性体/酸化物等の界面系の設計指針を考察する。特に、高い垂直磁気異方性と低い磁気ダンピング定数をはじめとする、従来報告されてきた電気・磁気・伝導特性におけるトレードオフ関係を打破し得る条件を探索し、その物理的メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
超スマート社会の実現に向けて、スピントロニクス分野では大容量、高速動作性、省エネルギー等の様々な特性を有する次世代スピンメモリの開発が求められている。例えばデータの書込みや保存、読取りにおいて、大きな垂直磁気異方性と小さな磁気ダンピング定数、高い磁気抵抗効果と低い素子抵抗など、複数特性の両立が不可欠である一方で、これら特性は多くの材料系でトレードオフ関係にあることが知られている。本研究では、第一原理計算と機械学習を組み合わせた手法により、電気・磁気・伝導特性など複数のトレードオフ特性を両立する磁気材料の探索を目的とする。本年度は、強磁性CoFe多層膜を例に、第一原理計算から磁気特性や生成エネルギーなどに関する物性のデータベースを取得するとともに、機械学習の階層型ニューラルネットワーク(NN)の計算プログラムを開発した。一般に、物質・材料に関するデータベースが十分でないことから、限られたデータベースから高精度に未知データを予測するアプローチが必要である。そこで、取得したデータベースのうち10~30%のデータを使って機械学習し、残り90~70%を未知データとして予測することを試みた。限られたデータベースからの予測精度を向上させるためにデータ拡張法とアンサンブル学習法を導入した。これにより未知データに対する予測精度に飛躍的な改善が見られ、これら手法の有用性を確認した。続いて、CoFe多層膜のトレードオフ特性として、垂直磁気異方性と磁気ダンピング定数に着目した。多目的最適化を行うべく、垂直磁気異方性が大きいとき、且つ、磁気ダンピング定数が小さいときに最小となるような無次元量を定義し、これと原子配列の関係をNNに学習させた。NNの予測から、両特性を両立し得る原子配列では、多層膜の表界面ではFeが、中央にはCoが集中して分布する特徴があり、原子配列の制御が両特性の両立に重要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の階層型ニューラルネットワークにデータ拡張法とアンサンブル学習法を導入することで、限られたデータベースに基づく予測精度を向上させることに成功した。本成果は、トレードオフ特性の課題を解決するための今後の材料探索においても活用する予定である。機械学習法の整備が進んだ点で、おおむね順調に進展している状況と言える。
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今後の研究の推進方策 |
データ駆動型の材料開発では、機械学習の学習・予測の信頼性が重要な鍵となる。次年度は、さらなる予測精度の向上を図るため、対象とする物性や系に適した機械学習法(階層型ニューラルネットワークの他、ベイズ最適化やLASSO回帰等)の検討や、入力する記述子の改良を進める。また、垂直磁気異方性と磁気ダンピング定数の特性を両立する人工多層膜の物理起源解明や、その他特性として磁気抵抗効果と素子抵抗など、スピントロニクスデバイスに重要な複数のスピン輸送特性を両立する磁気材料探索などへも展開する。
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