研究課題/領域番号 |
22K14294
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平井 悠久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (10828122)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 半導体 / パワーデバイス / 結晶 / 界面 / エッチング / 電気特性 / 窒化ガリウム / パワーエレクトロニクス / トランジスタ / 省エネ / MOS |
研究開始時の研究の概要 |
2050年カーボンニュートラルの達成へ向けて、電力の制御に用いられる電子部品であるパワーMOSデバイスについて、電力損失の小さい次世代型素子の普及拡大が重要である。次世代型素子は現状生産コストが高く、コストの削減が必要である。コスト削減においては、半導体チップサイズを縮小することによる半導体ウェハ1枚あたりの生産数増加が有効であり、パワーMOSデバイスの面積あたり抵抗を削減する技術革新が必要である。本研究は次世代パワー半導体GaNを用いたパワーMOSデバイスについて、デバイスに内在するMOSチャネル抵抗を削減する技術を、量産適合性も考慮しながら獲得することを目指すものである。
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研究実績の概要 |
予算申請時の予備実験環境を活用して、GaNウェットエッチ技術の条件依存性を精査した。研究当初は150度のような高温リン酸液を用いた処理で微傾斜結晶面を作製していたが、本年度の実験によって100度以下の低温でも作製可能であることが明らかになった。実験が容易な低温薬液でGaN微傾斜結晶面を作製可能な条件を見つけられたことにより、実用化のハードルを下げることができた。 得られた新規条件を適用しながら、微傾斜結晶面のMOSキャパシタ素子を作製した。本研究用の新規フォトマスクを設計・作製し、評価に最適な素子作製条件を調整するための試作を行った。微細トレンチのフォトリソグラフィ実験では、GaN特有の透明基板に対する適切な露光現像条件の探索に時間を要したが、最終的に、微傾斜結晶面を用いたトレンチ側壁MOSキャパシタの作製に成功した。 作製した微傾斜結晶面のMOSキャパシタについて、パワーデバイス要素技術としての特性を評価するため、C-V特性評価を行った。オリジナルのトレンチ側壁構造を適用することで、寄生容量の小さく、従来法より評価に適したC-V特性を得ることができた。この結果をもとに界面欠陥準位密度を評価したところ、目標とした~1011 cm-2eV-1よりもさらに優れた<10^11 cm-2eV-1の界面欠陥準位密度を示す特性が得られた。本研究で作製したGaN微傾斜結晶面が、開口形状であるという構造的な観点だけでなく、電気特性の観点からも、MOSデバイスの要素技術として優れたポテンシャルを有していることを、実験的に初めて明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
準備段階の荒削りな実験条件を精査し、より制御性の高く継続的な研究に適した条件を獲得できた。本研究への適用を見込んで研究をスタートした、オリジナルのトレンチ側壁MOSキャパシタ構造を、微傾斜結晶面の電気特性評価に実際に活用することができることを確かめられた。MOSキャパシタ作製の経験・実績をうまく活用することで、結果的に目標よりも優れた電気特性が得られ、実験~評価の一連の内容について、一年次の目標を達成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
GaNの微傾斜結晶面を用いたMOS界面の作製技術を確立できたので、当初の予定どおり、チャネル移動度の評価へ進む。一年次とは異なる仕様のGaN基板が必要であり、予定している仕様の基板を調達する。また、チャネル移動度の評価に必要なデバイス構造を設計し、実現するためのフォトマスクを設計・作製する。これらを用いて、GaNの微傾斜結晶面を適用したMOSFETチャネルを作製し、その動作を実験的に確認することを目指す。また、MOSFETの電流特性に基づいて、性能指標であるチャネル移動度を抽出する。トレンチMOSチャネル構造では一般的にチャネル長が小さく、チャネル移動度の抽出には正確な抵抗値の測定が必要である。特に、一年次に得られたC-V特性から、優れた電流特性が期待されるが、これは抵抗値が小さく評価としては難しいことを意味しており、デバイス構造の精密な設計に基づいて実験を進める。
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