研究課題/領域番号 |
22K14351
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
沈 尚 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, JSPS特別研究員 (20882426)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 細菌 / ウイルス / 溶存態DNA / 薬剤耐性遺伝子 / 琵琶湖 / 流入河川 / バクテリオファージ / メタゲノム解析 / 流域 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の抗生物質が効かない薬剤耐性菌の蔓延は世界的な社会問題の一つであり、水環境中で細菌が薬剤耐性遺伝子をどのように獲得するのかを明らかにすることは最重要課題である。申請者は、存在量・多様性ともに細菌を圧倒する細菌感染性ウイルスおよび、水中を漂う裸のDNAこそが薬剤耐性遺伝子の貯蔵庫であると考えた。本研究では、流域内(河川、下水処理場、琵琶湖)の薬剤耐性遺伝子が3つの画分内でどのように存在しているかを、メタゲノム解析を駆使して網羅的に明らかにし、全ての薬剤耐性遺伝子を対象とした分布図を作成する。
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研究実績の概要 |
【溶存態DNAの濃縮・精製方法】鉄共沈法および塩化セシウム密度勾配遠心法を用いて、溶存態DNAの濃縮および精製方法を検討した。鉄共沈法はウイルスを高回収率で濃縮できるすでに確立された手法であるが、同じ条件で溶存態DNAも濃縮できることを明らかにした。ウイルスのみの精製を目的とする場合、塩化セシウム密度勾配遠心法の遠心条件は、84,000g・2時間であるが、これを2日間にすることでほぼ全て(約90%)の溶存態DNAが1.7 g/mL層に移動することを明らかにした。 【流域調査】琵琶湖(北湖3地点、南湖1地点)と流入河川(12河川)から採水し、細菌・ウイルス・溶存態DNA画分を濃縮した。一部のサンプルについてはDNA抽出・シーケンスまで完了したため、薬剤耐性遺伝子の検出およびサンプル間比較を行った。 【薬剤耐性遺伝子のサンプル間比較】細菌画分からは602種類の薬剤耐性遺伝子が検出された。ウイルス画分からは40,775種のウイルスゲノムを構築できた(5.0から594.5 kbp)。これらのうち薬剤耐性遺伝子を保有するウイルスは1,162種であり、102種類の薬剤耐性遺伝子が検出された。細菌画分ではRND型薬剤排出ポンプや薬剤を修飾する酵素群(リン酸転移酵素、アセチル基転移酵素、ヌクレオチド転移酵素)が多数検出された。一方、ウイルスゲノムにはキノロン系耐性遺伝子、β-ラクタマーゼ、グリコペプチド耐性遺伝子が比較的多く検出された。これは、水平伝播の経路によって細菌が獲得しうる薬剤耐性遺伝子が異なる可能性を示す結果である。また検出されたバンコマイシン耐性関連遺伝子の中で耐性発現を誘導する遺伝子VanR・VanSは、ウイルスゲノムから多く検出され、細菌画分からはほとんど検出されなかった(5%)。これはウイルス感染が耐性発現に関与していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画である、溶存態DNAの濃縮・精製方法および流域調査を全てを完了した。さらに2年目に実施予定であったメタゲノム解析を一部実施することができ、画分間・地点間で薬剤耐性遺伝子の存在実態を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
DNA抽出まで完了している細菌画分サンプルについては、シーケンスを実施する。濃縮段階まで完了しているウイルス・溶存態DNAサンプルについて、塩化セシウム密度勾配遠心法を実施した後、シーケンスを実施する。 シーケンス後、各画分に含まれる薬剤耐性遺伝子を画分間・サンプル間で比較し、遺伝子の画分・地点間における共通性や差異性を明らかにする。
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