研究課題/領域番号 |
22K14354
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
滝沢 善洋 長野工業高等専門学校, リベラルアーツ教育院, 准教授 (10795082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | カーボンナノファイバーマット / 電界紡糸 / 機械的特性 / 引張試験 / 不融化 / 炭素化 / カーボンナノファイバー / 不融化処理 / 重油回収 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、海洋汚染物質の1つである重油を効率よく吸着回収する不織布状の機能性カーボンナノファイバー(CNF)マットの開発を目指す。達成のためには、ファイバー間に形成する空間の把握とデザイン(制御、機能化)、CNFの機械的強度の向上が不可欠である。特にこの研究ではファイバーの機械的強度を決定する熱処理(特に不融化)の条件を厳密に検討することで、強度の向上を試み、機能性CNFマットの開発と完成を目指す。当研究は新規の重油回収材料を提供し、水環境、海洋環境の保全に貢献するものである。
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研究実績の概要 |
カーボンナノファイバーマット(CNFM)の海上での重油回収材料への応用を目指し、マットの空間のデザインに注目し研究を実施してきた。自重の約20倍の重油(A)を吸着することがわかった(市販品では同じ評価法で自重の約5倍を吸着)が、CNFMの機械的強度の向上と定量的な評価が課題となった[19K15128]。 当該年度の主な成果を以下に示した。(i)原料となるPAN/DMF溶液濃度を12 wt.%で電界紡糸 (印加電圧20kV, 速度1.2 mL/h)すると取扱のしやすいCNFMが得られた。(ii)不融化 (空気中またはオゾン中、280℃、3‐9 h、0‐40 kPaで一方向への引張、セラミック板をサポートとして利用) と炭素化 (800℃, 1 h) により、これまでよりもしなやかで、一定の屈曲に耐えるCNFMを作製できた。 (iii) 10 x 30 mm、10 x 18 mm の6種類の短冊状試験片に対して引張試験を行い、10 x 18 mmの試験片で比較的安定した測定ができ、応力-ひずみ曲線から多段階での破断が生じることが分かった。測定された最大応力は0.12-0.72 MPa程度で、ひずみは0.007-0. 01であった。空気中280℃、9 hの不融化時の引張有無で比較すると、引張無で最大応力0.59 MPa、ひずみ0.012、引張有では最大応力0.72 MPa、ひずみ0.0078。オゾン中280℃、3 hの不融化時の引張の有無で比較すると、引張無で最大応力0.36 MPa、ひずみ0.0078、有りで最大応力0.39 MPa、ひずみ0.0067であった。したがって不融化時に引張することで応力は増加し、ひずみの値は減少する傾向がみられた。 今後も統計的な調査を継続し知見を蓄積、高温下など過酷な環境下で利用できる様々な不織布材料の開発に貢献できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、CNFMの機械的強度の向上を目指し、①電界紡糸によるPANNFMの作製条件の検討、②CNFMの表面の化学的状態の分析、③引張試験による定量的評価の検討を実施した。特に、①の検討により得られたCNFMが本研究においてこれまでに得られたCNFMに比べ、しなやかで取扱がしやすくなり、その特徴を③によって機械的特性の向上を定量的に評価できたことから、概ね順調に進展していると判断した。 実施した主な内容は以下の通りである。 (i)不融化処理の条件の検討(温度(280-350℃、オゾン酸化) 、不融化処理中の一方向への引張 (ca 20-60 kPa))、(ii)赤外吸収分光法(IR)によるCNFM表面の化学的分析、(iii) 引張試験(ロードセル50 N、クロスヘッド速度10mm/min)によるCNFMの最大応力とひずみ測定と測定方法の検討。 一般的なカーボンファイバーの不融化は繊維方向への引張を行いながら熱処理し、架橋をしながら六角網面を発達・配列させることで機械的強度が向上する。本実験においても引張試験により、不融化時の引張によってCNFMの機械的強度が向上(ca. 8‐22%)することを定量的に示し、確認することができた。CNFMは、一般的なカーボンファイバーとは異なり、不織布状で繊維方向が一様でないため一方向の引張による不融化の効果は限定的と推測される。 当該年度の進捗によって、不融化時の引張方法の検討、引張試験時の多段階の破断についての緻密で定量的な測定の必要性と、それらの検討により機械的特性を更に向上できる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方としては、①最大の課題であるCNFMの機械特性のさらなる向上と②CNFM内の空間と重油吸着量の相関関係を見出すことに重点を置く。具体的な推進方策として、引張試験を実施しCNFMの機械的強度の定量的な評価を行いながら、不融化条件(温度、時間、引張、オゾン酸化等)の検討と最適化を系統的に実施する。特に不融化時の引張に関しては今回のような一方向ではなく全方向で引張を行うなどの方法を検討する必要がある。CNFMの画像処理による分析では空間の大きさの把握と、さらにナノファイバーの方向の定量的な分析も行い、不融化時の引張の影響、CNFMの機械特性、重油吸着量との相関関係について調査を実施する。また、電気的測定によるアプローチを引張試験と組み合わせることで、より詳細なCNFMの機械的特性を評価することも検討している。また、将来的にはナノファイバーの微視的な機械的な強度の評価としてAFMによる評価も試みる。 本研究において機械的強度を保持するCNFMの作製と、その空間の分析手法、デザイン手法を明らかにすることを念頭に研究を推進できれば、過酷な環境下で使用できる新規の不織布材料の開発に貢献できる可能性がある。また、得られた知見は、現在様々な用途で利用されている不織布状材料の一層の機能化への応用も期待できる。
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