研究課題/領域番号 |
22K14370
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
中村 彩乃 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (70780980)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 温度応答性高分子 / 遮熱材 / ヒドロゲル / 太陽光制御 / 省エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
冷房による消費電力を抑えるため、夏場の太陽光(近赤外光)の透過率を外部の温度変化で自動的に制御し、室温上昇を抑えるスマートウィンドウや材料が研究されている。ここでは、相転移温度が室温付近で、且つ幅広い波長領域の透過率を制御可能な温度応答性高分子を用いる。本研究では、分子構造や分子量の異なる温度応答性高分子を用いて室温上昇を抑制する遮熱材を開発する。また、光は衝突粒子の大きさによって散乱角度や散乱される波長領域が変化することが知られているため、温度の上昇によって形成される温度応答性高分子の凝集粒子径と近赤外光の反射率にどのような関係があるのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
温度応答性高分子であるヒドロキシプロピルセルロース (HPC)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)をアクリルアミド(AAm)と架橋剤を用いて合成したHPC/AAmゲルまたはPNIPAM/AAmゲルを作製した。PNIPAM(Mw = 19-82万)を用いてPNIPAM/AAmゲルのLCST以下(25℃)の日射透過率は85.0-87.8 %であった。一方、LCST以上(50℃)では23.0-27.8%となり、分子量が大きいほど日射透過率が減少した。SEM観察よりHPCでは分子量の小さいHPC/AAmゲルほど細孔サイズが小さく、細孔数も少ないことが分かった。PNIPAM/AAmではPNIPAMの分子量が大きいほどわずかに細孔サイズが小さくなった。この結果から温度応答性高分子の凝集によってゲル中に形成される細孔サイズが小さいほど日射透過率を減少できると考えた。 そこで、溶媒を水とエタノールの混合溶液に変え、高分子と溶液との界面張力を小さくすることで細孔サイズを小さくできると考えた。HPC(Mw = 14万)、AAm、架橋剤を2.5-10 vol%のエタノール水溶液に溶解させてHPC/AAmを作製した。溶媒を水で調製したHPC/AAmゲルのLCSTは32℃であったが溶媒のエタノール濃度が増加するに伴い、LCSTが低下する傾向が見られた。HPC/AAmのLCST以上(50℃)での日射透過率(300-2500 nm)はエタノールを加えても27.6%までしか減少しなかった。しかし、LCST以上での近赤外透過率(800-2500 nm)に着目するとエタノール 10 vol%の溶媒では、水溶媒のHPC/AAmゲルと比較して約5%低下した。この時のHPC/AAmゲルの表面構造をSEM観察するとエタノール濃度の増加に伴い、細孔サイズが小さくなっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、温度応答性高分子の分子構造、LCST以上においてゲル中で形成される凝集粒子径、波長領域300-2500 nm(特に近赤外光領域)の透過率との関係を明らかにすることを目的としている。2023年度は分子量の異なるHPCやPNIPAMを主に用いてAAmゲルを作製し、UV-vis-NIRスペクトルから日射透過率や近赤外透過率を算出した。また、LCST前後で凍結乾燥したゲルの表面構造をSEMにより観察した。この結果、高分子の凝集粒子径よりもLCST以上で形成されるゲル中の細孔サイズや数が光の散乱に影響を与えていると分かった。そこで、日射透過率や近赤外透過率を下げるため、溶媒をエタノール水溶液に変え界面張力を下げることで細孔サイズの調製を行った。今後は、温度応答性高分子の種類や分子量だけでなく溶媒を変えたことによる細孔サイズと光の散乱との関係についても調査していく。当初の計画に加えて溶媒の影響についても考察していくので進捗状況は遅れている。 しかし、種々の条件で合成したゲルの日射透過率や近赤外透過率に関する多くの結果が得られたことから、MATLABの機械学習を用いてゲルの作製条件から日射透過率や近赤外透過率の予測を検討している。 温度応答性高分子の構造と日射透過率、近赤外透過率との関係については遅れているが、予測モデルの取り組みは計画よりも早く進行している。従って、進捗状況はわずかに遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 2023年に引き続き温度応答性高分子(HPC、PNIPAM)を用いてAAmゲルを作製し、透過率と表面構造との関係を調査する。 (2) 他のアルコール水溶液で調製したHPC/AAmゲルの透過率の測定と表面構造の関係を調査する。 (3)ゲルの合成条件から日射透過率や近赤外透過率の予測をMATLABの機械学習を用いて行い、透過率に影響を与えるパラメータを検討する。 (4) 温度応答性高分子を用いて作製したAAmゲルの遮熱特性評価や耐候性試験を行う。
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