研究課題/領域番号 |
22K14374
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鵜飼 真成 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (40896164)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ヒューマンファクター / 快適性 / 受容性 / パーソナル空調 / セレンディピティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ヒューマンファクターを活用した環境制御システムの評価法を構築し、建物のエントランスや廊下等の経路空間から、執務室のアンビエント環境や人体近傍に至る各レイヤーの温熱環境が互いに親和する新しい設計条件を見出すことである。本研究ではこれまでの熱的快適性評価では軽視されていた執務者の行動に重点を置き、実際のオフィスで働く執務者の行動履歴や代謝量と着衣に関する実態調査から、執務者が熱的中立を実現するために必要とする要求温度の分布を明らかにする。また、建物の経路空間にクールスポット等の採涼空間を備えた際の効果やパーソナル空調に求められる性能を、本研究でモデル化を評価法により明らかにする。
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研究実績の概要 |
パーソナル空調やクールスポット、等、ヒューマンファクターを活用したシステムの評価法は確立されていなく、その快適性は執務者の満足度から定性的に評価されているのが現状である。したがって、身体近傍から都市環境に至る各レイヤーに相応の環境調整機能を備えるヒューマンファクターデザインは省エネ性と快適性の両立が期待される次世代の考え方であるが、各レイヤーに要求される温熱環境を現行の快適指標を用いて推定することが困難であるため、実際の建物への導入はほとんど進んでいない。そこで、本研究ではヒューマンファクターを活用したシステムの快適性を客観的に評価可能であり、また建物設計時や運用時に各空間に求められる温熱環境やその効能を定量的に把握することができるモデルの構築を目的とする。そのためには、人間を静的な存在として捉え、さらに居住空間の熱的な特性を平均値として便宜的に仮定する従来の姿勢からの脱却が求められる。 本年度は、実際のオフィスで働く執務者のリアルタイムの生理量と心理量を測定する技術を構築した。また、「不均一な温熱環境の中で環境調整行動をしながら、自分自身の好みの環境を見つけること」を「温熱のセレンディピティ」と定義し、発生状況と執務者の心理量に与える影響を調査した。物理量および生理量の変動から非定常で不均一な温熱環境のオフィスにおけるプレザントネス獲得およびセレンディピティの発生がさらなる快適性向上に寄与することを明らかにした。 本年度の研究成果は2023年度建築学会大会学術講演会、令和5年度空気調和・衛生工学会大会(福井)、Healthy Buildings Europe 2023にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は、実際のオフィスで働く執務者の生理量及び心理量をリアルタイムで計測する手法を確立し、さらに人体熱モデルとの連携を図ることで以下の成果を得た。 ・リアルタイム快適感申告と熱履歴を考慮した空気温度・人体熱負荷の変化量の関係より、空気温度が高い時および人体熱負荷が受熱状態時に、暑不快感が取り除かれることで被験者がプレザントネスを得ていたことが示唆された。 ・不快脱却時およびパーソナル空調使用時に気持ち良い申告が得られた日における温熱環境満足度が高いことから、セレンディピティ発生によって快適性がさらに向上することが示唆された。 ・物理量および生理量の変動から非定常で不均一な温熱環境のオフィスにおけるプレザントネス獲得およびセレンディピティの発生がさらなる快適性向上に寄与することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は調査対象建物を増やし、引き続き実測データの収集を行う。また、人体熱モデルJOS3を用いることで、周囲の物理環境と代謝量及び着衣量から人間の詳細な生理量(濡れ率や熱収支、等)の経時変化を可視化することで、各空間・行動における暑熱ストレインを推定し、建物ごとの温熱的特性を人間の視点から動的に評価可能なモデルを構築する。また、P-Rチャートを活用することで、ヒューマンファクターを考慮したシステム単体の評価、及び複数の組み合わせを複合的に評価することで、各システムに求められる環境制御範囲と制御方法を提案する。
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