研究課題/領域番号 |
22K14413
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
高道 昌志 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (40793352)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 都市 / 水辺 / 近代化 / 河岸 / 近代 / 舟運 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、明治期から昭和期にかけての東京とその周辺領域を対象に、都市空間における“水辺”の近代化を検討するものである。近代都市における水辺空間は、水運や工業利用によって伝統都市の近代化・産業化の過程に一定の役割を果たしてきたが、他方で水辺には近世以来の空間構造や共同体の存立基盤も残されていた。こうした“水辺”の社会・空間が近代の統制的なシステムにいかに回収・再編され、またそれが近代都市の形成過程にどのような影響を持ち得たのかについて、水資源を実際に活用していた水辺組織体の変容過程に注目することで明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究では、東京を中心とした関東流域圏における歴史的な水辺の利用主体を明らかとし、そうした主体がいかに変質しながら、近代都市の形成過程をいかに規定してきたのかを明らかとすることである。 令和4年度の調査では、主に次のような実績を得ることができた。まず、研究対象地での現地調査を実施し、そこからそれぞれの対象地における、水辺空間の変遷過程に関する知見を得ることができた。現地調査では、過去から現在までの水辺空間の変化や、かつての状況がいかに現状を規定しているのか、これまでに収集した歴史資料を参照しながら調査し、必要に応じて空間の実測調査などを行った。 次に、昨年度から行っていた東京中心部の水辺(河岸地)に関する資料収集を積極的に行い、新たな地図・台帳資料を発見することができた。そして、そこから得られた情報を元に、これまでに作成していた東京の河岸地に関するデーベースを補足し、より高い解像度で東京中心部の水際空間を見ることができるようになった。 こうした調査結果は、GIS上での整理や、現地調査から得られた情報を図面化するなどの作業を合わせて行なった。本研究では、水際生活圏モデルという、水を中心とした主体の変質から、地域変容を捉えるための分析フレームを構築することを目指しているが、上記のようなビジュアル的な手法による表現(図化)は、そのモデルを示すひとつのケーススタディとして位置付けることができる。 また、今年度の調査を通じて得られた成果を踏まえ、専門誌への論考の投稿を行った。またその雑誌において、「都市と水」に関する特集の企画編集にかかわるなど、本研究に関連する視点から幾つかの成果発信を行った。以上が、今年度の研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本助成事業は、令和4年度が初年度であるが、ここまで研究は概ね順調に推移していると言える。 まず初めに、申請当初の段階での研究計画を振り返ると、初年度である令和4年度から翌年度までの2年間は、次のような予定を計画していた。それは、資料収集とGISによる定量把握と事例研究を目標とし、その具体的な方法が、「水際の土地を管轄する各自治体の公文書館などから、公文書や古地図、水際の土地利用状況や土地権利関係の資料を収集し、権利関係や土地利用状況を整理し一覧を整理する」である。 資料収集については、現地調査を実施した関東流域圏の一部である利根川上流部周辺部の河岸についての文献や地図資料などを得ることができた。ここで得られた資料を組み合わせながら現地調査を実施することで、解像度の高い事例研究の成果を得ることができた。なお、現地調査を行ったのは、群馬県高崎市の倉賀野河岸や、群馬県玉村町の五料河岸など、近世から近代初期にかけて発展した利根川水運の最上流部の河岸湊である。 また、東京中心部では、東京都公文書館から河岸地に関する新たな地図資料を発見することができ、研究発展のための大きな成果を得た。本地図資料は、明治期の東京市内の河岸地を網羅的に描いたもので、当時の土地利用状況を正確に把握するこが可能である。さらに、事例研究として、東京島嶼部の水際空間に関する現地調査も実施した。伊豆大島の波浮港において、地元の旧有力者層の屋敷地を調査することで、港や水資源の権利関係に迫るための見通しを得ることができた。 本研究は、東京の中心地とその周縁地域を対象としているが、令和4年度はその双方で成果を得ることができた。また、島嶼部の事例も加えることで、より俯瞰的に水辺と都市の近代化の関係を捉える視座を獲得することができた。以上のように、現在までの研究は上記の研究計画と照らして、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況で確認した通り、これまで東京の中心部と周縁部、さらには島嶼部も研究対象に含めながら、バランスよく調査を進展させることができている。そのため、次年度以降も基本的にはこのような体制で研究を継続していくことを予定している。また、申請時の研究計画では、3年目である令和6年度から、重点的調査対象地の選定と現地でのフィールドワークを行うことを予定しているため、令和5年度はそれに向けての準備を進めていきたい。 まず、東京の中心部では、上述の通り研究発展に効果的な地図資料が手に入ったため、その情報整理とGIS上での図化を継続して行う。そのうえで、そのデータベースから見えてくる定性的な河岸地の把握から、研究目的に合致する特徴的な個の河岸地を選定することを同時に進めていく。 また、東京周縁部では、令和4年度に実施した利根川上流部に他の水系も加えて、引き続き資料収集と現地調査による事例研究を進めていく。このとき、令和6年度から重点調査地区の選定のために、より詳細に各河岸の事例研究を行いたい。具体的には、近代初期から現在までの続く水辺の主体に焦点を当てて、それらが近代化のなかでいかに変質したのか、その見通しを得ることを目指したい。 加えて、ここまでの研究成果を、論文などにまとめることを並行して行いたい。特に、東京中心部に関しては、申請以前からの研究蓄積もあることから、これに令和5年度の成果を加えるかたちで、論文投稿や学会発表を行うことを目指したい。
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